妊婦にバイアグラ投与する臨床試験、新生児11人死亡で打ち切り オランダ
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【7月25日 AFP】胎児が子宮内で正常に発育していない妊婦を助けるため、男性機能不全(ED)治療薬バイアグラ(Viagra)の使用を模索する革新的な研究が、臨床試験での新生児11人の死亡を受け中止となった。研究は、オランダの医師と科学者のチームが進めていた。
オランダ国内にある他の10の病院と共同で研究を進めていたアムステルダム大学(University of Amsterdam)付属病院(AMC)は23日、新生児11人の死亡と、早産で出生した他の新生児の肺病発症を受け、研究を中止したと発表した。
バイアグラという商品名で広く知られるジェネリック医薬品シルデナフィルは、より一般的には勃起不全のある男性の治療に用いられている。
だが、この薬剤には血管を拡張させる効能があるため、胎盤への血流を促進し、子宮内で発育が遅れている「胎児の成長を活性化させる」可能性があると医師らは考えていた。AMCが声明で説明した。
2015年に始まったこの研究についてAMCは、妊娠初期に胎児の発育不良がみられる女性に対象を絞ったものだったと指摘。「このような胎児の予後は悪く、現在知られている他の治療法は存在しない」と述べた。
先週に臨床試験が打ち切りとなった時点で、妊娠中に服用するためのバイアグラを与えられた女性は全部で93人だった一方、別の90人の女性にはプラセボ(偽薬)が与えられていた。母親へのバイアグラの影響は認められなかった。
だが、バイアグラを服用していた女性93人の新生児19人が死亡。うち11人は、バイアグラとの関連が疑われる肺高血圧症の1種が原因で死亡したと考えられている。この他、新生児6人に、十分な酸素の取り込みを阻害する先天性の肺疾患がみられたが、一命は取り留めた。プラセボを投与したグループでは新生児9人が死亡したが、肺疾患によるものではなかった。肺に何らかの先天性疾患があった新生児は3人確認された。
オランダのメディアが24日に伝えたところによると、胎児がバイアグラの影響を受けているかが分からず、不安を覚えている女性がまだ10~15人いるという。
今回の研究を率いたAMCの婦人科医師ベッセル・ガンズボート(Wessel Ganzevoort)氏は、オランダ日刊紙フォルクスラント(Volkskrant)の取材に、バイアグラは胎児の成長促進を助けるための非常に有望な薬剤と考えられていたと話した。
同氏は、女性患者らには今回の研究について事前に伝え、女性らの方からバイアグラを処方するよう依頼されたことを明らかにし、それだけに今回の研究結果には「衝撃を受けた」としている。
「これが新生児の成長促進に有効であることを証明したいと考えていたが、反対のことが起きてしまった」、「患者に害を与えるなど、最も望まないことだ」と動揺を隠せない様子で語った。
同氏はまた、同様の臨床試験に取り組んでいるカナダの研究チームにも今回の結果を伝えたことを明らかにした。(c)AFP