【7月16日 東方新報】中国・杭州市(Hangzhou)で働く出前配達員の胡根偉(Hu Genwei)さんは、サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)期間中、残業をすることにした。

 安徽省(Anhui)にいる両親は、母親が病院で介護の仕事、父親は養魚池で魚の養殖に携わる。胡さんは金をもっと稼ぎ、実家近くの都市でマンションを買い、両親に住んでもらおうと考えている。いずれ息子の学費も必要になる。

■不安定な仕事

 出前ライダーの仕事は、さまざまな外部要因の影響を受ける。

 昨年の中秋節と国慶節は、二つの休日が連なって大型連休になった分、販売の機会が一つ減った勘定で、配達員の仕事も影響を受けた。仲間たちで酒を飲むと、ある者は泣き出し、「もうたくさんだ、やめた」と投げやりになる者もいた。

 杭州の出前ライダーたちが、職場の危機を迎えたこともあった。昨年7月、杭州の名所・西湖湖畔にあるレストランでガス爆発が起こり、二人が死亡、46人がけがをしたほか、周囲の店にも被害が及んだ。ほどなく、杭州市のレストランは役所からのローラー式監査と相次ぐ改善要求に見舞われた。

「焼肉通り」の店も例外なく、ほとんどが門を閉めた。配達員たちの仕事は無くなり、翌月に周辺の飲食店が再び店を開けるまで、交代で休暇を取った。

 胡さんも、約一か月は1日の注文数が10件程度まで落ち込み、その月の給与は4000元(約7万円)に落ち込んだ。

 この街の賃貸料は、10数平方メートルのピザ店の場合、1年16万元(約270万円)だ。たくさんの店が開店し、閉店し、そしてまた開店し…という移り変わりを、胡さんは見てきた。配達員たちも入ってきたり、辞めて出て行ったり、と入れ替わりが激しい。いつしか、胡さんはベテラン配達員になっていた。

 細々とした注文がようやく完了し、W杯の試合がまた始まった。胡さんはまだ配達の途中。テレビ画面はどこにも見当たらない。信号待ちの時にスマホを取り出してみると、仲間たちがちょうどグループ内で討論が終わったところだった。ブラジルの勝ちだ。