納得がいかない林さんが、「そんな道理はないでしょう」と言うと、客は「お前みたいな人間に道理を言う必要はない」と、口汚くののしった。

「遅れたことは僕のミスだし、金も弁償すれば済む話だけれど、僕の心を踏みにじるようなことは許せない。お互いに同じ人間じゃあないか」と林さん。「でもクレームを付けられて、給料を大幅にカットされることは怖い」と胡さんにスマホの画像電話で涙ながらに訴える。

 胡さんは林さんを慰めるしかなかった。「気にするな、気にするな」

■頑張れなくなってしまう人もいる

 林さんは20歳を過ぎたばかりの大学生だ。農村から杭州の大学に入学。夏休みは故郷に帰らず、短期のアルバイトを始めた。出前の配達は、体力的にはきついが、仕事を早く覚えられるし、稼ぎも悪くない。2か月で生活費を差し引き、1万元(約17万円)を超える金が手元に残る勘定だ。

 杭州の夏は、最も蒸し熱い時期だが、出前ライダーにとっては稼ぎ時だ。胡さんは「汗を流せばお金はついてくる」という。

 林さんは胡さんのことを「師匠」と呼び、いつも胡さんの後について行動している。胡さんは、林さんのような「弟子」をもう4人も育てた。弟子たちに配達のルートなどの経験を教えている。「×」評価の話、生活のプレッシャーの問題、その他諸々も。

「考え方次第だが、頑張れなくなってしまう人もいる」

 若い配達員は、よく胡さんに人生相談を持ちかけてくる。人がよく、年齢も上で、比較的早い時期に出稼ぎに出てきており、経験もそれなりに積み重ねてきているからだ。

 この出前の仲間たちの中で、胡さんより年齢が上なのは、詹発順さん(Zhan Fashun)(42)だ。自虐的に自分を「出前兄さん」ではなく「出前おじさん」だと呼ぶ。

 詹さんも杭州に来て2年だ。中学を卒業後に故郷を離れ、これまでにもさまざまな場所で働いてきた。夜間の配達専門でやってきた。毎日午前2時以前に床に就いたことはない。旧正月や病気の場合を除き、毎晩、電動バイクにまたがり杭州の街を駆け回っている。この地域では、出前配達のチャンピオンだ。それでも、この間の社会の変化は大きすぎると感じている。

 詹さんの息子はもうすぐ中学に上がる。江蘇省(Jiangsu)の実家にいるが、詹さんは仕事が忙しく、めったに逢うことはない。息子に対する期待は、最低でも大学に行くことだ。