胡さんは、客からクレームを受けたことはない。ただ、「×」評価は1年に5~6回は受けている。

 あるケースでは、出前を頼んだ人は教師だった。注文書の連絡欄に、学校に出前を届ける際に「電話はしないこと」「守衛のところに届けた後でメール連絡すること」と書いてあった。胡さんは、20分で届け、客の要求に応じて電話せず、代わりにショートメールで連絡を入れた。ところが、帰ってきたら評価「×」を食らった。

「電話で聞いたよ、なぜ×なのかと。そしたら、客いわく注文し間違えたから、だってさ。言葉が出なかった」

 胡さんが最も悩んだケースは、出前をある事務所に届けた際に、事務所には出前の発注者の同僚だという人がいただけで、料理を置いていけばよい、と言われた。

「では念のため、お客様に再度電話いたしましょうか」と聞くと、「いや、その必要はない。私が渡すから」。

 そして、胡さんが30分後に受けた電話では、発注者から謝罪された。数刻前に胡さんが話した同僚はふざけて出前の料理を隠してしまい、待てど暮らせど料理を手にすることができなかったので、「×」評価にしてしまったという内容。

「大丈夫、気にすることはないですと笑いながら言うよりほかに、言葉がなかったよ」と胡さんは言った。