【7月9日 CNS】中国教育部の陳宝生(Chen Baosheng)部長は、「『中学・高校では必死に勉強し、大学は楽しく遊ぶ』現象を変えるべきだ」と語った。

 教室は、教育によって人を育てる場だ。高等教育の質のレベルアップは、学生が学生の本分に戻り、一生懸命に勉強するのはもちろん、教師も教師の本分に戻り、教育に専念することが肝要だ。

 教師の授業レベルが低いと学生らが不満を漏らす時、実は教師らも学校上層部からの指示に困惑している。

 学生は真面目に授業を受けず、テストが終わると点数を上げてくれと教師に交渉する一方、教師は真面目に授業を行わず、テストの採点も甘い。学生にとって都合のいい教師ではないと、学生は不満を漏らし、「厳格な教師だ」と指摘する。

 このような現象に対して、研究者は一種の成績のインフレだと考えている。エリート教育だった高等教育が次第に大衆的規模に拡大、発展するのに伴って教育を受ける人数が増加し、さらに就職市場の激しさが増すにつれ、「インフレ」は不可避の現象となった。

 これは、高等教育の大衆化が実現した先進国では、すでに存在していた問題だ。統計によると、米ハーバード大学(Harvard University)で最高点のAを獲得していたのは1966年には学生の27%のみだったが、96年になると46%に増えた。同年、名誉卒業生となった卒業生は、全卒業生の82%に上った。

「インフレ」の直接の原因は、学生が教師の授業などを評価するようになったことだ。これに伴い、教師は授業の難度を下げた。また、大学が学生の入学許可基準を下げたことと、学生の満足度を上げるため、入学後の学生に対する成績などの要求を下げた。

「インフレ」が世界の高等教育機関の普遍的な現象であり、この現象と「入学は難しく、卒業は簡単」の形態には大きな関連があるということだ。

 ここで必要なのは、学生を淘汰(とうた)する仕組みを作り、「入学しやすく、卒業しづらい」制度を通して、大学教育の質のレベルアップを図ることだ。

 中国の歴史上、この制度が厳格に運用されたことがあった。1928年から37年の間、北京の清華大学(Tsinghua University)の毎年の学生淘汰率は27.1%だった。この間、理学系で最も高い淘汰率は69.8%、工学系は67.5%だった。

 著名な物理学者、呉有訓(Wu Youxun)氏が清華大学の物理学部に在籍していた32年の卒業生の淘汰率は、82.2%に達した。このような高い淘汰率が、社会の混乱を引き起こすことはなかった。それどころか、優秀な学生の育成に貢献した。清華大学の物理学部の29年から1938年までの学生のうち、中国科学院(Chinese Academy of Sciences)のアカデミー会員21人、米科学アカデミー(NAS)アカデミー会員2人を輩出した。

 時間の流れに伴い、当時の制度をそのまま現代に導入することはできないが、高等教育の大衆化の流れにあって、「入学しやすく、卒業しづらい」制度を通して、高等教育の質を上げることが本来の姿だ。(c)CNS/JCM/AFPBB News