■出向先の稚拙な管理に警告も

 しかしこうした好条件の提示にもかかわらず、ハラナCEOの他社出向計画に対しては、SAAのパイロット団体から動揺の声が上がっている。

 南アフリカ航空パイロット協会(SAAPA)は、「極めて稚拙な財務管理と経営の不手際の結果」、一部の会員が出向契約や無給休暇を強要されることには「失望と狼狽(ろうばい)を禁じ得ない」と述べた。

 同協会の副会長であるグラント・バック(Grant Back)機長は、自社のネットワーク内で操縦士を活用する方がSAAにとっては好ましいと話す。出向先の航空会社で操縦士が極端に不足しているのは、劣悪な労働条件やワークライフバランスの欠如が理由で、労使関係の問題を抱えているところもあるからだという。

 バック氏はパイロットにさらに高い報酬が提示されていることを認めながらも、家族に3~4週間会えないパイロットもいると警告する。また外国へ出向することによって「子どもに今までの学校をやめさせなければならなかったり、友人や家族を置いて引っ越したりすることになる」とも指摘している。

 だが、競合するブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)などと比べると、どのレベルでも慢性的な過剰人員になっているとの評判があるSAAでは何らかの対策が必要だろう。地元メディアによると、SAAの従業員名簿に記載されている操縦士と客室乗務員50人は「何もすることがないのに」給与を得ている状態にあるという。

 航空アナリストのヨアヒム・ベルムーテン(Joachim Vermooten)氏はAFPの取材に対し、操縦士が不足している国はたくさんあり、SAAにはその穴を埋めることのできる有能なスタッフが多数そろっていると指摘。「SAAが何としてでも取り組まなければならない経費削減には、(他社への出向計画は)良い方法だ」と語った。©AFP/Michelle GUMEDE