【6月27日 AFP】航空機の搭乗員は、特定の種類のがんの発生率が一般平均より高いことが、米国を拠点として勤務する客室乗務員5000人以上の調査で明らかになった。

 26日の学術誌「エンバイロメンタル・ヘルス(Environmental Health)」に掲載された論文の共同執筆者で、米ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard University T.H. Chan School of Public Health)の研究者のイリナ・モルドコビチ(Irina Mordukhovich)氏は「乳がん、メラノーマ(悪性黒色腫)、メラノーマ以外の皮膚がんについて、航空機搭乗員の生涯有病率が一般の人に比べて高いことが今回の研究で分かった」と話し、「この職業に従事している人たちの過体重率と喫煙率の低さを考えると、これは驚くべき結果だ」と指摘している。

 今回の調査に参加した客室乗務員5366人のうち、がんと診断されたことがあると回答した人は全体の15%強となった。これは、回答者の年齢を考慮に入れても、調査対象としたがんのすべての種類において客室乗務員のがん有病率が高いことを物語る結果だ。

 乳がん有病率では、一般の人の約2.3%に比べ、女性乗務員では同3.4%だった。また、子宮がんでは乗務員の0.15%に対し、一般の人が0.13%。子宮頸がんでは乗務員1.0%に対し、一般の人が0.7%。胃や大腸などの消化管がんでは乗務員0.47%に対し、一般の人が0.27%。甲状腺がんでは乗務員0.67%に対し、一般の人が0.56%だった。

 乳がんリスクは、出産未経験の女性と3人以上出産した女性で高かった。出産未経験はリスク因子の一つとして知られていると、モルドコビチ氏は指摘した。

 男性乗務員については、皮膚がんの有病率が高いことが判明した。男性乗務員のメラノーマとメラノーマ以外の皮膚がんがそれぞれ1.2%と3.2%だったのに対し、成人人口全体では0.69%と2.9%となっている。

 この傾向が特に強かったのは、米国で航空機での喫煙が禁止となった1998年以前から勤務している場合だった。

 航空機搭乗員は、がんの発生に関わると推定される既知の要因(発がん要因)に日常的にさらされている。発がん要因としては、宇宙放射線、体内時計(概日リズム)の乱れ、汚染化学物質などが挙げられている。

 今回の調査に参加した客室乗務員は80%以上が女性。平均年齢は51歳で平均の勤続年数は20年強だった。(c)AFP