【5月18日 AFP】世界の自然保護区の多くでは舗装道路や石油掘削などの開発が進められ「人の居住地」が次々と出現しているとの調査結果が17日、発表された。これにより、本来の保護対象である野生動物が危険にさらされているという。

 米科学誌サイエンス(Science)に掲載された論文は、ヒガシクロサイ、スマトラトラ、メガネウサギワラビーなどの絶滅危惧種動物が生息する自然保護区では、人間によって深刻なダメージがもたらされており、世界の自然保護区の3分の1が「人間の強烈な圧力」にさらされていると警告している。

 論文はまた、中国の国土面積の3分の2に匹敵する約600万平方キロに及ぶ陸上の保護区域では、危機に直面した生物多様性の保全が損なわれることが大いに危惧されるとした。

 研究論文によると「人間の活動が全く及んでいない陸地は全体の10%しかなく、これらの領域の大半はロシアやカナダなどの高緯度の国々の辺境地域内にある」という。

 論文の共同執筆者で、米自然保護団体「野生動物保護協会(Wildlife Conservation Society)」のジェームズ・ワトソン(James Watson)氏はAFPの取材に、この問題が最も深刻なのはアジア、欧州、アフリカだと語った。

「大半の国々は、第1段階として自然保護区の指定は行っているが、保護区の管理を財政的に支援したり大規模な人的干渉から保護区を守ったりする、より困難で重要性が高い第2段階を行うまでには至っていない」

 自然保護区は、鳥類、哺乳類、海洋生物などが繁栄するための安全な場所を確保することで、地球が直面している生物多様性の危機に対する重要な解決策の一つとなるとみなされている。

 全世界で保護区域に指定された陸地の面積は、1992年以降で倍増している。