【1月11日 AFP】戦争では人同士が傷つけ合うだけにとどまらず、野生動物にも大きな被害が及ぶとの研究結果が10日、発表された。アフリカの多くの反植民地闘争や内戦では、一部の野生動物が絶滅の危機に追い込まれたという。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文によると、1946年から2010年の期間に戦争の被害が及んだアフリカ大陸の自然保護区は全体の70%以上に上ったとされ、大型草食哺乳類の個体群の多くに「下降スパイラル」を引き起こしたという。

 例えば、モザンビークのゴロンゴーザ国立公園(Gorongosa National Park)では、1964~74年に起きたポルトガルからの独立戦争とその後の内戦で、ゾウ、シマウマ、ヌー、アフリカスイギュウ、イボイノシシ、カバ、レイヨウ類などの大型草食動物の90%以上が死んだ。

 戦時下では、銃弾や爆弾で動物が殺されるのに加え、警察機能が停止することから密猟も増加する。動物を殺すのは、貧困が増大する中での食べ物の確保とより多くの武器を購入するために売却する象牙や皮革を得ることが目的だ。

 戦争が起きると、政府や、国内自然保護区の運営組織を含む支援機関が崩壊するケースも多くみられる。

 その一方で今回の研究では、こうした厳しい状況でも楽観材料が存在していることが判明した。米プリンストン大学(Princeton University)のロバート・プリングル(Robert Pringle)氏とジョシュア・ダスキン(Joshua Daskin)氏の研究チームによると「紛争地域では野生動物の個体数は減少するが、回復不可能な程度にまで崩壊するケースはまれだった」ことが分かったのだ。

 ゴロンゴーザ国立公園でさえも、前向きな協力姿勢を示す地域共同体との個体数再生に向けた協調努力のおかげで、野生動物の個体数は戦争前の水準の約80%にまで回復した。ただ地域共同体の多くに対しては、違法な野生動物の肉を食用にしないよう説得する必要があったという。

「ゴロンゴーザは動物相全体が破壊され、消滅の一歩手前まで近づいたが、それでも野生動物の個体数を回復させ、機能的な生態系を再生させることが可能であると確認されている」と、プリングル氏は話す。「このことは、今回の調査対象とした他の過酷な紛争地域もまた、少なくとも原理的には、再生させることが可能であると示唆している」