■「パルムドール賞で、ノーベル平和賞ではない」

 英コメディーグループ「モンティ・パイソン(Monty Python)」のメンバーで映画監督のテリー・ギリアム(Terry Gilliam)氏による『ドン・キホーテを殺した男(The Man Who Killed Don Quixote)』は、今年の映画祭ラストを飾る作品として予定されているが、作品の権利をめぐる問題が勃発し、その公開が危ぶまれている。

 また、ケニアの作品として初めて同映画祭にノミネートされた『Rafiki』が現地で上映禁止処分となっている。女性同性愛者の恋愛を大胆に描いたことがケニアでは問題視された。

 さらに、コンペティション部門にノミネートされ、最高賞パルムドール(Palme d'Or)を狙う『Three Faces』のイラン人監督ジャファル・パナヒ(Jafar Panahi)氏は、本国イランから渡航禁止を解かれていない。同監督はイラン政権に批判的な立場を表明している。

 他方で、ロシア・モスクワで横領の罪に問われ自宅軟禁下にあるキリル・セレブレンニコフ(Kirill Serebrennikov)監督の保釈を求める訴えも無視された。同氏の支持者らは、嫌疑は政治的なものだと主張している。セレブレンニコフ監督の作品もコンペ部門にノミネートされている。

 こうした状況についてブランシェットは、彼らの作品は政治的な観点ではなく、芸術的価値に基づき評価されるとし、「これはパルムドール賞で、ノーベル平和賞ではない」と発言している。

 開会式後、アカデミー賞受賞監督であるイランのアスガー・ファルハディ(Asghar Farhadi)氏の『Everybody Knows』がオープニング作品として上映された。同作品には、ペネロペ・クルス(Penelope Cruz)やハビエル・バルデム(Javier Bardem)らが出演している。(c)AFP/Fiachra GIBBONS and Deborah COLE