【4月18日 東方新報】2018年の大学新卒者数が820万人と過去最高を更新した。同時に優秀な人材を巡る「争奪戦」が各地で激化している。

 上海交通大学(Shanghai Jiao Tong University)科学史・科学哲学系の李侠(Li Xia)教授は、中国の都市間の人材争奪戦は、中国経済における各都市、地域の力にも直接影響するとみている。

 40年にわたる急速な発展を経て、中国の都市化率は50%以上を超え、都市間の情勢に重大な変化が起こっている。中国経済の版図において、「北上広深」(北京、上海、広州、深セン4都市)は「1級都市」として公認されているが、それに次ぐ「準1級都市」「2級都市」のリストは絶えず更新され、経済発展が非常に早い一部の都市を「新1級都市」とも呼ぶようになった。

■若く優秀な人材集めが都市の将来を左右

 中国社会科学院が2017年6月に発表した「中国都市競争力報告」によると、中国東部と中部地区は垣根がなくなりつつあり、中部地区の大都市は急成長している。西部地区では成都(Chengdu)、西安(Xi'an)、貴陽(Guiyang)市など一部都市の人口増加が目立つ。

 GDPの規模や人口増加面から見ても、東部の長江デルタ地区、杭州(Hangzhou)、蘇州(Suzhou)、南京(Nangjing)、寧波(Ningbo)や天津(Tianjing)などのほか、最近は西部地区の武漢(Wuhan)、西安、重慶(Chongqing)なども「新一級都市」の座を巡って争っている。

 武漢市は2017年初めに「100万人人材引き留め計画」を、成都市は「人材新政策12条」を発表した。西安市は戸籍取得の条件を大幅に緩和し、人材を惹きつけようとしている。

「このような人材争奪戦は、どの都市にとっても極めて重要だ。中国の都市間の発展格差は徐々に大きくなっている。各地方政府は人材を逃せば、10年は挽回できないと考えている」と李侠教授は言う。

 中国の人口は長年、主に中西部から経済が発展している東部、南東沿岸に移動してきたが、戸籍取得条件の緩和によって、人材が中西部にも集まり始めてきている。西安市では転入者が1日で8000人を超える日もあった。

 また、大学数が北京の次に多い武漢市ではここ数年、卒業生の3分の2が沿岸地域に流出していたが、2017年の同市の大学卒業者のうち地元での就職者は30万1000人、戸籍の新規取得者は14万2000人に達し、前年比でそれぞれ2倍、6倍まで増加し過去最高記録になった。

■労働者人口の増加はピークアウト

 天津大学管理・経済学部公共管理学院で博士課程指導教授の傅利平(Fu Liping)院長は、「人的資本は、物的資本よりさらに重要」と指摘する。

 傅院長は、「優秀人材」の争奪戦でこれまでと違うのは、各地とも若者層の獲得に重点を置いている点だ。その背景に、中国の労働者人口の増加がピークを過ぎ、高齢化社会が加速しつつあることがある。(c)東方新報/AFPBB News