■男性の後見人次第で刑務所出所もパスポート取得もできない

 恐ろしい話もよく聞かれる。

 女性が刑期を終えても、後見人から引き取りの申し出がないという理由で、刑務所に足止めされているといった報道も少なくない。AFPの取材に応じたあるサウジ女性は、唯一の男性後見人である父親が事故に遭って意識不明になった際には、パスポートの更新もできず八方ふさがりの状態に置かれてしまったと明かした。

 ある女性人権活動家は匿名を条件にこう語った。「運転の権利か後見人制度を終わりにする権利、どちらかを選ぶことができるとしたら、私は後者を選びます」

 ダンマム(Dammam)市の自宅に帰ったブクハリさんは、末息子のモハメド君(16)を抱き締めた。ブクハリさんのきょうだいは、ガソリンスタンドで働くのは伝統に背く許し難い行為だと非難しているが、モハメド君は母親の味方だ。

 だがモハメド君は、母親の仕事を友人たちには隠しておこうと思っている。母親がこれ以上、侮辱されないようにするためだ。

「たぶん5年後には、女性がガソリンスタンドで働くことが当たり前になっていると思う」。モハメド君はそう言うと、母親の手にキスをした。(c)AFP/Anuj Chopra