■いつか訪れる世界

 クラム氏はいくつかの例を挙げた。一見元気そうな生徒も実は悩み抱えているということを学校のカウンセラーが把握できたり、ある人物の不審な行動が健康上の理由によるものなのか、それとも犯罪行為に起因するものかを警察が瞬時に理解できたりする。

 そして、デートアプリの利用者は、相手のプロフィールに目を通す代わりに、相手そのものをスキャンすることでその真意を知ることができ、またアーティストたちは、自身の作品に対する人々の感情や反応を知ることが可能になるだろう。

 その一方でクラム氏は、「他人が自分の情報を共有していることや、共有したくないことを他人に知られたりしていることに多くの人が快く思っていないことは理解している。私は、私生活が暴露される世界をつくりたいのではない。私は、より効果的に相手を思いやれる世界をつくりたいと思っている」と語る。

 また、テクノロジーによる恩恵がすべての人々に平等に行き渡り、一方で悪用を避けるためのルール作りを重視しているとしながら、「人々が気づかないといけないことは、こうした技術はすでに存在しており、そのような世界が(いつか)訪れるということ」「どうせ訪れるのであれば、自分らで管理できるようにしておいたほうがいい」とも話した。

「私たちは、これまでよりもっとお互いを知ることができるようになる。間違った理由ではなく、正当な理由でこのテクノロジーを使いたい」 (c)AFP