■「カリフ制国家」の残党

 しかし、ISが今も掌握するダマスカスの複数の地区は、ISが2014年に宣言したシリアとイラクにまたがる「カリフ制国家」に全く接続していない。

 ISのカリフ制国家は、3年にわたる国際的な軍事作戦によって昨年崩壊し、残された拠点の立て直しはほとんど行われていない。

 米主導の有志連合とそれに同盟するクルド人部隊、またロシアの支援を受けるシリア政権軍とそれに同盟する民兵組織はそれぞれ、シリア東部の砂漠地帯に潜むIS戦闘員の行方を今も追っている。

 イラク国境に近い東部デリゾール(Deir Ezzor)県では、IS戦闘員らの潜伏地域への空爆が続いている。この地域の戦闘員らは、ISが勢力を増す前に得意としていたゲリラ戦術への回帰を強いられている。また、ホムス(Homs)県でもISの複数の部隊が活動を続けている。

 シリアに残留するIS戦闘員数の推計は、データによって差が激しい。米独立系シンクタンク、新米国安全保障センター(CNAS)のニコラス・ヘラス(Nicholas Heras)氏は、その数を8000~1万3000人と推測する。