【3月9日 AFP】主にディーゼル車から排出される二酸化窒素(NO2)が、2014年にドイツで6000人の早期死亡につながったとする報告書を8日、独環境省が発表した。排ガス規制をめぐる不正に揺れる自動車業界にとっては新たな痛手となる報告だ。

「大気中の有害な二酸化窒素の大きな排出源がディーゼル車なのは明らかだ」と、調査を主導したマリア・クラウツベルガー(Maria Krautzberger)氏は指摘。「きれいな大気と私たちの健康を維持するため、手を尽くさなければならない」と述べ、国内各市が独自に市内の特定区域でのディーゼル車の走行を禁止できるとした裁判所の判断に言及した。

 調査によると、心疾患で死亡した約6000人について、元をたどれば大気中に排出されたNO2が原因だった可能性がある。また、NO2は糖尿病、高血圧、ぜんそくなど、さまざまな疾患の患者が増加している要因ともなっており、糖尿病では約43万7000人、ぜんそくで約43万9000人が影響を受けているという。

 自動車産業が輸出の大黒柱となっているドイツでは、ディーゼル車の未来をめぐる世論は割れている。行政訴訟における最高裁に相当する独連邦行政裁判所が2月、大気汚染対策として各都市が独自にディーゼル車の走行を禁止できると判断したことで、車を所有する国民の間には不安が広がっている。

 ディーゼル車の有害性への懸念は、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が排ガス検査に合格するため違法ソフトウエアを利用していた不正問題が2015年に発覚したことで一気に高まった。疑惑の目はすぐさま他の自動車メーカーにも向けられた。

 公式データによるとドイツでは昨年、ミュンヘン(Munich)やシュツットガルト(Stuttgart)、ケルン(Cologne)などを含む約70自治体で欧州連合(EU)の基準を上回るNO2濃度が測定された。(c)AFP