【2月12日 AFP】米ニューヨーク州は11日、ハリウッド(Hollywood)の大物プロデューサーだったハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein)氏の長年にわたる性的不品行から従業員を守らなかったのは州法違反だとして、同氏と同氏の弟、2人が共同設立した映画会社ワインスタイン・カンパニー(The Weinstein Company)を提訴した。

 ワインスタイン氏は、100人以上の女性からセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)や性的暴行、レイプの被害を受けたと告発され、映画界で失脚した。英米の警察が犯罪事件として捜査を行っているが、まだ立件には至っていない。

 ニューヨーク州検察当局は今回の提訴について、現在進行中の捜査の結果だと説明。破産秒読みといわれるワインスタイン・カンパニーには差し迫った身売りの可能性があり、被害者に十分な補償が行われない恐れがあったと述べた。

 検察は、人事部に従業員からの被害の訴えが複数あったにもかかわらず、ワインスタイン・カンパニーの取締役会と経営陣は適切な対策を講じず、従業員を守ることも、ワインスタイン氏の言動に歯止めをかける努力もしなかったと糾弾している。

 検察によれば、ワインスタイン氏の女性アシスタントたちには雇用条件として同氏の性生活を円滑にする業務が課せられ、その方法などが記載された「バイブル」と呼ばれるマニュアルを持たされた。同氏の訪問先でセックス相手の候補とされた女性にメールや電話で接触したり、セックスのために同氏のスケジュールを空けたりさせられたという。

 さらに英ロンドンからニューヨークに呼ばれたスタッフが、「より魅力的だと(ワインスタイン氏に)思ってもらえる服装や香り」を女性アシスタントたちに指導していたという。

 女性幹部たちも、ワインスタイン氏の「次の征服相手」の候補に直接会い、仕事のあっせんを約束するなどしなければならず、検察はこうした業務が女性従業員らの品位を傷つけ、屈辱を与えて、女性にとって不快な職場環境に拍車をかけたと指摘している。

 ワインスタイン氏は、複数の従業員やその家族を「殺すぞ」などと言葉で脅し、有力政治家たちとの人脈を吹聴。米大統領警護隊(シークレットサービス、USSS)にもパイプがあると主張し、彼らが「問題を処理してくれる」などと何度も口にしていたという。

 また、ニューヨークやロサンゼルスでワインスタイン氏の送迎を担当していた運転手らは、車内にコンドームと勃起不全治療薬の注射を常備しておくよう要求されていたという。

 ニューヨーク州のエリック・シュナイダーマン(Eric Schneiderman)司法長官は、訴状には従業員に対するワインスタイン氏の「悪意のある搾取的な虐待」が詳細に記されていると説明。「われわれの訴状にあるとおり、ワインスタイン・カンパニーはまん延するセクハラや脅迫、差別から従業員を守らず、ニューヨーク州法違反を繰り返した」と述べた。(c)AFP/Jennie MATTHEW