【1月25日 AFP】ライオンやチーターは狩りで狙う被食動物より足が速く力が強い上に、敏しょう性も劣らず高いが、シマウマやインパラは驚くべき戦術を駆使して自身の弱点を補っているとの研究論文が24日、発表された。逃げるスピードを緩めて、大型ネコ科動物たちを幻惑するのだという。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文は、ネコ科のライオンやチーターは全速力で逃げる被食動物との距離を詰めることに長けているため、早く走ることはまさに命取りの行為なのだと述べている。

 論文の主執筆者で、英ロンドン大学(University of London)王立獣医カレッジ(Royal Veterinary College)のアラン・ウィルソン(Alan Wilson)教授は、AFPの取材に「全速で逃げるとそれ以上加速することができず、被食動物の動きを予測しやすくなる」と指摘。「狩りのスピードを遅くすることで、被食動物の生き残りに有利に働くようになる。うまく立ち回る機会を得られるからだ」と説明した。

 その証拠は、被食動物の捕獲率だ。シマウマを狙うライオンとインパラを狙うチーターは、被食動物を追うと3回に2回は取り逃がしてしまう。

 今回の研究では、アフリカ南部ボツワナの北部にある草原地帯で、ライオン9頭、チーター5頭、シマウマ7頭、インパラ7頭にそれぞれ特別な首輪を装着し、データを収集した。調査対象の動物はすべて野生で、草原を自由に歩き回っていた。

 首輪は5500回以上にわたる動物の高速移動で位置、速度、加速度、歩数、1秒間に何回方向転換できるかなどのデータを記録し、これまでにないほどの膨大な情報をもたらした。

 研究チームはまた、世界選手権クラスの運動選手を対象に実施されるような筋力測定用の生体組織検査も行った。

 分析の結果、ライオンとチーターの運動能力は被食動物に比べて著しく高く、走る速度で38%、加速力で37%、急に減速する能力で72%、それぞれ上回っていることが分かった。さらに筋力も被食動物より20%高かった。

 これほど明確に有利な点が捕食動物側にあるにもかかわらず、シマウマとインパラは追われて逃げている間、ネコ科動物たちがほんの1、2歩後方に迫ると、その目いっぱい伸ばしたかぎ爪から逃れるために予測不能な動きをすることで優位を保っていた。

「被捕食動物は狩りの行方を決めており、ただ逃げるのではなく、土壇場で方向転換しなければならないことを理解している」と、ウィルソン教授は説明した。(c)AFP/Marlowe HOOD