【1月13日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が「肥だめ」国家と呼んだとされる国々の中に含まれているハイチの人々は、同国が世界初の黒人共和国として独立したことにまつわる人種差別意識の表れと受け止める人もいるなど、この発言に対して独特の不快感を示している。

 トランプ米大統領は11日、移民改革をめぐる議員らとの会合でハイチ、エルサルバドルとアフリカ諸国を「肥だめ国」と呼んだとされる。翌12日は2010年にハイチで死者20万人以上を出した大地震が起きた日に当たることから、特にハイチではトランプ大統領の発言に感情を害した人が多かった。

 追悼式典でジョブネル・モイーズ(Jovenel Moise)大統領はトランプ氏の卑俗な発言に直接言及することはしなかったが、「ハイチはこの地球上の他の国々と変わらない」と述べ、列席者から拍手を浴びた。

 ハイチは1804年、世界初の黒人共和国として独立を果たしたが、奴隷制度を容認していた国々の多くはこれを承認せず、黒人指導者らともなかなか正式な外交関係を結ぼうとしなかった。フランスは、最も豊かな植民地だったハイチの独立を1826年まで認めず、ハイチが独立の際にフランス側に支払った現在170億ユーロ(約2兆3000億円)以上となっている賠償金の返還要求を無視している。

 ハイチで1803年に奴隷の反乱が起きる原動力となったブードゥー教の聖職者でアーティストのエロル・ジョズエ(Erol Josue)氏は、トランプ氏の発言には「衝撃を受けたが、驚きはしなかった」とコメント。「全てのハイチ人にとって、他国の人たちが私たちをどう見ているか理解する良いきっかけになった」として、「トランプ氏はあえて言葉に出すが、世界中の非常に多くの人がずっと思ってきたことでもある」と述べた。(c)AFP/Amelie BARON