命を懸けて楽園を守る民間環境警備隊、フィリピン・パラワン島
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【1月5日 AFP】フィリピンの熱帯雨林に鳴り響いていたチェーンソーの音がやむと、「タタ」は部下たちに下に行くよう手で合図した。
かつて民兵組織のリーダーだったエフレン・「タタ」・バラダレス(Efren "Tata" Balladares)さん(50)が今、率いているのは、消滅の危機に瀕しているパラワン(Palawan)島の天国のような自然を守る環境警備隊だ。
違法伐採を行う者たちを追って、警備隊は険しい山道を15時間連続で歩いていた。一人は腫れた左腕をかばっていた。数日前の偵察中に転落して骨折したのだが、まだ医師の診察も受けておらず、包帯を巻いているだけだ。
睡眠は途中、わずか30分ほどとっただけ。しかし、「狩り」の目標まであと一歩というところまで迫ると体内にアドレナリンが吹き出して疲れも吹き飛び、シダの茂みを駆け抜ける。
チェーンソーの音が再開した。警備隊が近づく音は十分にかき消されている。タタは小声で部下たちに最後の命令を出した。
7人の警備隊員が、木を伐採していた2人にオオカミの群れのように襲いかかった。切り倒されていたのは絶滅危惧種に指定されている「アピトン」という広葉樹だった。「止まれ、止まれ、顔を伏せろ!」。その日、初めてタタの声が響き渡った。