【12月3日 AFP】1台のバンが10人のゲストを乗せて、上海の秘密の場所へ向かう。着いた先はこれといった特徴のない工業ビルだが、その内部では、映画『2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)』に使われたリヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss)の曲が鳴り響いている。

 この無機質な建物の中にあるのは、ミシュランガイド(Michelin Guide)で三つ星を獲得したレストラン「ウルトラバイオレット(Ultraviolet)」だ。前衛的な雰囲気にあふれる店での食事は1人6000元(約10万円)と高額だが、好奇心旺盛な美食家たちで予約は3か月先までいっぱいとなっている。

 ディナーは全22品からなるコースで、一品ずつに「演出」──音と映像、そして香り──が伴う。

 フランス人シェフのポール・ペレ(Paul Pairet)氏(53)は、「料理に合った適切な雰囲気」を提供することで、心と味覚の「点を結びたい」と話す。それができれば、それぞれの料理の味わいがぐっと増すというのがペレ氏の考えだ。

 ここでの体験はまるで「料理の世界ツアー」のようだ。BGMはクラシックのクロード・ドビュッシー(Claude Debussy)からロックのAC/DCまでと幅広い。

 ペレ氏のフィッシュ・アンド・チップスは、ビートルズ(The Beatles)の「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ(Ob-La-Di, Ob-La-Da)」が流れるなか、ロンドンの雨の風景と共に提供される。またロブスターを使った料理では、海の香りと共に砕け散る波の映像がレストラン内に投影される。

 この日、レストランを訪れていた上海でコンサルタントをしているというシェリル・チェンさんは「ここでの体験ではすべての感覚を必要とする」とコメントした。

 1990年代にパリの「カフェ・モザイク(Cafe Mosaic)」のシェフとして一躍有名になったペレ氏。上海には、ウルトラバイオレットの他、より「伝統的な」フランス料理店2店を構え、またこれまでに、トルコ・イスタンブール、香港、オーストラリア・シドニー、インドネシア・ジャカルタなどでもレストランをオープンさせている。(c)AFP