【11月1日 AFP】コウモリの幼獣は、母親ではなく群れの仲間から発声を学び、群れ特有の鳴き声の「なまり」を身につけるとの研究結果が10月31日、発表された。

 米オンライン科学誌プロス・バイオロジー(PLOS Biology)に掲載の論文によると、コウモリの発声の違いは、英語のロンドンなまりで話すかスコットランドなまりで話すかの違いと同レベルだという。

 今回の研究結果は、集団の中での言語習得に新たな光を投げかけている。この種の学習能力は主に人とその他ごく少数の動物だけが持つと考えられている。

 鳴き鳥では、親のどちらかをまねることで鳴き声を習得する傾向がある。この点でコウモリは鳴き鳥と異なることを、今回の結果は示している。

 論文の主執筆者で、イスラエル・テルアビブ大学(Tel Aviv University)のヨシ・ヨベル(Yossi Yovel)氏は「発声を他者から学習する能力は、人間における発話の獲得にとって極めて重要だが、動物の間ではまれと考えられている」と述べながら、「コウモリの幼獣は、自分の周りにいる同じねぐらの仲間が発声するなまりを習得する」と付け加えた。

 今回の研究で、研究チームは妊娠したエジプトルーセットオオコウモリを14匹捕獲した。

 これらのコウモリを3つの群れに分け、それぞれの群れで幼獣とその母親を一緒に飼育した。それぞれの群れには異なるコウモリの鳴き声の録音を流して聞かせた。

 その結果、全ての幼獣は、母親の泣き方ではなく、録音で聞かされたそれぞれの群れの鳴き方を身につけた。

「母親コウモリと群れで流れている鳴き声の発声の違いは、ロンドンなまりと例えば、スコットランドなまりの違いに等しい」と、ヨベル氏は説明する。

「幼獣は母親の『ロンドン』なまりを聞いていたが、同時に多数の『スコットランド』コウモリがみな同じように発声する『スコットランド』なまりも聞かされていた」

「そして最終的に、母親の『ロンドン』なまりより、群れの中で通用する『スコットランド』なまりの方に近い方を身につけた」と続けた。

 研究チームは今後、コウモリが自分の群れを離れるとそのなまりがどのように変化するかや、他者との関わりでなまりがどのように影響するかなどを調べたいとしている。(c)AFP