■なぜ危険な場所に

 ボイルさんはさらに妻が性的暴行を受けたことも明かした。見張り番が単独で行ったものではなく、見張りのリーダーと、ハッカニ・ネットワークの司令官の支援を受けた組織ぐるみの犯行だったという。ボイルさんは、司令官は「アブ・ハジル(Abu Hajr)」という名の人物だとしている。

 ハッカニ・ネットワークはアフガニスタンとパキスタンで活動するグループで、タリバンの副指導者でもあるシラジュディン・ハッカニ(Sirajuddin Haqqani)師が率いている。ハッカニ・ネットワークはパキスタンの軍事組織とのつながりが長らく疑われている。

 ボイルさんは、娘の殺害と妻のレイプはいずれも拉致されてから2年ほど後たった2014年に起きたと語った。ボイルさんによると、タリバンは2016年、この事件の捜査を行った上で犯罪が行われたと認め、「罪を犯した異端者」に対する措置を講じるようハッカニ・ネットワークの幹部に命じたという。

 しかし、なぜボイルさん夫婦がタリバンの支配地域にいたのかという疑問は残っている。妻のコールマンさんの父親、ジム・コールマン(Jim Coleman)さんは米ABCのインタビューで、妊娠中の娘を極めて危険な場所に連れて行ったことは許しがたいと語っている。

 ボイルさんはコールマンさんと結婚する前の2009年にザイナブ・カダー(Zaynab Khadr)さんという別の女性と短期間結婚していたことがある。この女性は、キューバのグアンタナモ湾(Guantanamo Bay)にある米軍基地施設に10年間収容されたオマル・カダー(Omar Khadr)さんの姉だ。

 オマル・カダーさんは、まだ10代だった2002年にアフガニスタンで戦闘中に拘束され、グアンタナモ収容所にいた2010年、手投げ弾による米兵の殺害、殺人未遂、スパイ行為、テロへの物的支援など罪で、禁錮8年を言い渡された。しかし2012年、残りの刑期をカナダでつとめることが認められ本国に送還された。さらに2015年、カナダの最高裁はカダーさんの条件付き釈放を認めた。

 ボイルさんはカダーさんの釈放を求めて積極的に活動していた。

 カナダのクリスティア・フリーランド(Chrystia Freeland)外相は12日、ボイルさんは何の捜査の対象にもなっていないと述べている。

 パキスタン軍によって救出された後に撮影されたものだとしてCBCが放送した動画の中でボイルさんは「私たちを拘束していた犯罪者らは善良なイスラム教徒ではない。悪いイスラム教徒でさえない」と話していた。「やつらは間違いなく犯罪者で、間違いなく異教徒で、イスラムの教えに導かれていない司令官らに指図されていた」 (c)AFP/Mike Carroccetto