■「私は発想があまり豊かでない人間」

 ノーベル委員会(Nobel Committee)は5日の授賞発表で、イシグロ氏が一番取り組んでいるテーマは記憶、時間、自己欺瞞(ぎまん)だと述べた。

 人もうらやむほどの成功にもかかわらず、インタビューでの姿勢は控えめだ。英紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)との1995年のインタビューでは「私は発想があまり豊かでない人間」「たくさんのアイデアがあるわけではない」と語っている。

 また、不安定になりがちな職業にもかかわらず、どうして小説家たちはこれをわざわざ選択するのかとの質問に対しては、「作家が頭のおかしい人たちだとは言いません。私は固定観念が嫌いなので。でも、人という構造体として、何かがずれているのでしょう」と話した。

■執筆の世界に

 1954年に長崎で生まれたイシグロ氏は、父親が英国立海洋研究所(National Institute of Oceanography)で研究を始めるにあたり5歳のときに英国に移住した。一時的な滞在の予定だったが、最終的に家族はロンドンから50キロ南西のギルフォード(Guildford)に移住することになった。

 地元の学校を終えた後、カンタベリー(Canterbury)のケント大学(University of Kent)に入学し、ここで英文学と哲学書を読んだ。

 ピアノとギターを弾くイシグロ氏は、ロックスターになることを以前は目指していたが、後にその対象が小説家へと変化していったのだという。

「すごく無関心に聞こえるかもしれないけれど…(執筆は)必ずしもやりたかったことではなかった」とフィナンシャル・タイムズとのインタビューでは語っている。