■成長期の延長

 儀式の慣習を持ち、壁画制作や死者の埋葬、現生人類との交配などを行っていたとされるネアンデルタール人は、約3万5000年前に絶滅した。

 彼らは現生人類よりはるかに大きな頭蓋骨を持っていたことが知られており、脳の容積も現生人類より大きかった可能性がある。

 だが、どのようにして脳の大型化に至ったかについては、ほとんど分かっていない。一つの説は、ネアンデルタール人が現生人類に比べて成長速度が速く、ネアンデルタール人の子どもはより速やかに成人サイズに達したというものだ。この経路を示唆する過去の研究は、主に歯の手がかりに基づくものだった。

 今回の最新研究は、より完全に近い化石標本に基づいている。ネアンデルタール人の少年の骨格化石には、左半身の36%、頭蓋骨の一部および乳歯と永久歯などが含まれていた。

 研究チームは少年の骨を分析した結果、単に脳の成長が現生人類より速いのではなく、ネアンデルタール人の成長期が長かった可能性があると考えるに至った。

 リオス氏は「より大型の脳を成長させる1つのメカニズムは、成長期の延長と考えられる」と記者らを前に述べた。

■不可解な死

 このネアンデルタール人の少年がどのようにして死に至ったかは謎だ。

 体重26キロ、身長1.11メートルのこの少年は「頑健」で、病気の兆候はみられなかったと研究チームは説明している。

 少年の骨には発見地の洞窟にあった他の骨と同じ「痕跡」が残されていた。これまでの別の研究では、ここで食人行為が広く行われていたことが示唆されていた。

 しかし、論文の共同執筆者のアントニオ・ローザス(Antonio Rosas)氏は、AFPの取材に「少年の骨には痕跡がいくつかあるが、死因までは分からない」と話している。(c)AFP/Kerry SHERIDAN