【8月28日 CNS】中国・江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)の道路で、清華大学(Tsinghua University)蘇州自動車研究院(Suzhou Automotive Reseach Institute、以下研究院)が自主開発した無人電気自動中型バスの公開試験走行が行われた。運転手はのんびりと運転シートに座るだけで、バスが自動運転で道路上を走る。車の後ろには、バイクに乗った交通警察官がしっかりと護衛する。

 中国では近頃、百度(Baidu)の李彦宏(Robin Li)最高経営責任者(CEO)が無人自動運転車に乗って試験走行をライブ配信したことで、「違反運転ではないか」と報道されたこともあり、無人自動運転車が再び熱い話題になっている。無人自動運転車は「車輪式移動ロボット」と言われ、ここ数年来人気のある技術だ。各国の科学者たちは車内に運転人工知能(AI)を搭載し、ハンドル操作から運転手を解放することを望んでいる。

 無人運転中型車の外観は、一般の中型車とはあまり変わらない。ただ、車のフロントにある小さな柱が独特で、ルーフにはきのこ状のアンテナが2つ付いている。

 研究院傘下のシャシー制御研究所の丁延超(Ding Yanchao)副所長の紹介によると、「柱」の正体はレーザーレーダーで広範囲の障害物の情報検出に使われる。インテリジェントドライブによって、AIは障害物の位置や距離を判断する。車にはさらに最大200メートル以内の状況を測定するミリ波レーダー、及び光学観測用のカメラが設置され、無人車の「器官システム」として構成されている。また、ルーフにある2つの「キノコ」状のものはGPS(全地球測位システム)アンテナで、車がどのように、どこへ走るのかを決める。

 無人自動運転車の設計意図について、丁副所長は「統計によると90%の交通事故は人為的要因によるものだ。AIは運転疲労がないし、人間よりも感知範囲が広く、反応速度も速いので、事故にも迅速に対応できる。無人自動運転車の導入で、交通上もより安全になり、人は運転の退屈さからも解放され、社会的コストを下げることに貢献する」と話している。

 現在、中国の無人自動運転車の技術は成熟しているが、完全な無人運転を実現するにはまだ長い道のりだ。次のステップとして、研究院は既存技術の基礎の上にさらに改良を行い、工場や埠頭、空港などの道路状況が比較的平坦な区域で実際応用のための試運転をする。

 他方で、現在の中国無人運転車の発展は板挟みの状態に置かれている。国内は無人自動運転車専用の大型試験場が不足しており、一方では交通法規によって無人走行試運転車は認められない状況だからだ。 

 現在、研究院では毎回の試運転の際には交通管理部門に報告し、派遣された交通警察官が全行程の規制と監督を行っている。運転席には必ず人が座らなければならないし、「無人運転を人が運転しているように見せています」と丁副所長は苦笑する。

 いつの日か、国が無人試運転車の試運転場を建設すると共に、関係する法規を整備し、中国で技術が定着し発展することを丁副所長は切望している。(c)CNS/JCM/AFPBB News