【6月30日 AFP】ラニエーロ・マンチネッリ(Raniero Mancinelli)は目落ちのものを提供するわけにはいかない。フランシスコ(Francis)法王が新たに5人の枢機卿を任命する式典が迫っていた。それに間に合わせるため、大急ぎで新枢機卿ための緋色のローブを作らなくてはならなかった。

 バチカン市国(Vatican City)の壁のすぐ外側に位置し、マンチネッリが一家で経営する仕立て屋には、世界各地からカトリック(Catholic)の顧客たちが集まってくる。

 フィリピン人の修道女が特価商品の棚に陳列してある一番安い聖杯の寸法を計る一方で、若いブラジル人司祭は金の刺繍をたくさん購入している。そのそばでは、アイルランド人の司祭が、ワンサイズしかない礼拝式用の新品のローブに体を押し込んでいる。

 来月80歳になるマンチネッリは、多くの顧客たちと親しい間柄だ。「君は初めての黒人法王になるだろうね!」とアフリカ人司教に冗談を飛ばすと、「そうならないことを祈るよ!」と返される。しかしくだらない冗談を交わすのも束の間、店の奥の仕事部屋ではマンチネッリが信頼を置く、1950年代ものの「ネッチ(Necchi)」のミシンが待ち構えている。レールには、半分しか出来上がっていないカソック(cassock)と呼ばれる司祭平服や、モゼッタ(mozzetta)と呼ばれる短いケープが吊るされている。

 このミシンはまるで「フェラーリ(Ferrari)」のように動くのだとマンチネッリは語る。しかしそれでも新しいオーダーメイドのローブを仕上げるには少なくとも1週間はかかるという。

「教会の王子たち」と呼ばれる枢機卿に今回新しく選ばれたのは、エルサルバドル、ラオス、マリ、スペイン、そしてスウェーデン出身の5人。そのうち4人は任命式の服装をマンチネッリに依頼した。