■枢機卿たちのソックス

 法王がまだ本名のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(Jorge Mario Bergoglio)で通っていたときのこと。彼は司教になったとき、マンチネッリにシンプルな金属製の十字架を求めたという。そしてフランシスコ法王が誕生してからは、ミニマリズムが流行している。マンチネッリの店のガラスケースに陳列されている、貴石を施した重厚な金の十字架はまったく売れない。より控えめな値段の木製の十字架を選ぶ司教たちもいる。

 服装に関しては、とくに1960年代後半以降、過度なぜいたくはしないようになっている。長いケープやマント、平らな帽子、バックル付きの靴はもう使われない。いまだに長いトレーンを着用している大胆な枢機卿もいるが、珍しい例と言える。ほとんどの枢機卿はモダンで飾り気のない靴を選ぶ。以前は強制されていた、揃いの緋色のソックスさえ今は任意だ。儀式用ではない黒いカソックに至っては、とくに枢機卿の身長が低い場合は、もはや33個のボタンを施してなくてもよくなった。

 マンチネッリの最も誇れる偉業は、かつて12人の新枢機卿を一度に飾り立てたことだ。そして彼はまだ引退するつもりはない。「私は北極から南極にいたる人たちの服を作っているんだ! どうしてミシンを片付けることができようか?」と、マンチネッリは冗談まじりに語った。(c)AFP/Catherine MARCIANO