【6月30日 AFP】インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相は29日、多数のヒンズー教徒が神聖視する牛の保護を口実にした少数派の人々を狙った殺人事件が相次いでいることを非難した。少数派への暴力については、政府が見て見ぬふりをしていると批判されていた。

 モディ首相が自警主義に関して発言するのは約1年ぶり。数日前には、列車に乗っていた10代のイスラム教徒が牛肉を運んでいたとして刺殺される事件が発生していた。

 モディ首相は「聖牛崇拝の名の下に人を殺すことは容認できない。マハトマ・ガンジー(Mahatma Gandhi)も認めないだろう」と述べた。

 インドではこの数か月、特に牛を殺したり、牛肉を食べたりしたと疑われたイスラム教徒が標的になる、自警主義的な殺人事件が相次いでいる。

 PTI通信(Press Trust of India)によると、29日にはジャルカンド(Jharkhand)州で、イスラム教徒の男性が牛肉を運んでいたとして群衆に殺害された。

 先週には15歳を含む4人兄弟が、首都ニューデリー(New Delhi)から列車で帰宅途中に、座席をめぐる口論の末に襲われる事件が発生し、注目を集めた。兄弟の1人は牛肉を運んでいると難癖を付けられて襲われたと話している。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)のインド支部長を務めるアーカル・パテル(Aakar Patel)氏は今週、声明で「イスラム教徒に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が免責されているように見える状況に強い懸念を抱いている」と述べた。

 アムネスティによると、4月以降、少なくともイスラム教徒10人がヘイトクライムとみられる事件に巻き込まれ、公共の場でリンチされたり、殺害されたりしているという。(c)AFP