【5月31日 AFP】フィリピン軍は31日、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に忠誠を誓う武装勢力と同国軍が一週間以上にわたって繰り広げている戦闘により、軍の治安部隊が武装勢力のメンバー89人を殺害したと明らかにした。しかし武装勢力側は人質を取りながら、現在も激しい抵抗を続けているという。

 家宅捜索を続ける軍部隊に従軍取材しているAFP記者によると、南部ミンダナオ(Mindanao)島のマラウィ(Marawi)市内で31日朝、イスラム過激派組織「アブサヤフ(Abu Sayyaf)」のメンバーが、取り残されている住民に紛れて潜伏する地区を狙い、戦闘ヘリコプターが繰り返しロケット弾を撃ち込んだという。

 軍とアブサヤフの衝突は先週23日に発生。アブサヤフのメンバーらは、米政府の最重要指名手配犯であるアブサヤフの指導者、イスニロン・ハピロン(Isnilon Hapilon)容疑者を治安部隊が逮捕しようとアジトを急襲した報復として、ISの黒い旗を掲げてマラウィ市内を荒らしていた。

 軍報道官の話によると、フィリピンにおけるISの指導者も兼ねているハピロン容疑者は逃走したが、現在もマラウィ市内にとどまっているようだとの見方を示した。また、この報道官は市内の治安回復とハピロン容疑者の捜索において、武装勢力メンバー89人が殺害されるとともに、治安部隊員21人と民間人19人が死亡したと説明した。

 この報道官はさらに、市内のおよそ1割の地域で今も脱出できていない市民が多数いることを認め、武装勢力側が支配下に置いている地区で今後、ますます激しい抵抗に遭遇するだろうという見解を示したが、軍が危機の終息に向けて「非常に前向き」な進展をみせているとも述べた。

 また州の危機管理当局の報道官によると、マラウィ市内に現在もとどまっている民間人は2000人超に上るという。(c)AFP