【5月3日 AFP】陸上女子短距離の元女王だった故フローレンス・グリフィス・ジョイナー(Florence Griffith-Joyner、米国)の夫が、長年破られない妻の世界記録を抹消しうる国際陸上界の動きに徹底抗戦することが分かった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)が2日に報じた。

 1984年ロサンゼルス五輪の男子三段跳び金メダリストで、1987年にジョイナーと結婚したアル・ジョイナー(Al Joyner)氏は、現存する世界記録を白紙化する今回の提案は不当との考えを示した。

「誰かの一筆で歴史が塗り替えられること」にいら立ちを覚えるという現在57歳のアル氏は、同紙に対し「家族の名誉が汚されてしまう。私は死ぬ気で闘うし、あらゆる法的手段を見つけ出すつもりだ。五輪の金メダルへ向けた練習のように闘う」と話した。

 今年8月に国際陸上競技連盟(IAAF)によって検討される今回の提案では、世界記録が認可されるのは、問題となる記録が公式な国際大会で樹立され、関係する選手が「大会までの数か月間で定められた回数のドーピング検査を受けた」場合に限るとされている。

 計画を提案した欧州陸上競技連盟(European Athletics)のスヴァイン・アルネ・ハンセン(Svein Arne Hansen)会長は、「あまりにも長く記録を包む疑惑や皮肉」を取り除くことが目的だといい、IAAFのセバスチャン・コー(Sebastian Coe)会長もこれに賛同する姿勢をみせている。

「フロー・ジョー(Flo-Jo)」の愛称で親しまれたジョイナーは、薬物使用が蔓延した1988年ソウル五輪の女子200メートルで21秒34の世界記録を樹立しただけでなく、同五輪直前には100メートルでも10秒49の世界記録をつくっており、今もなお史上最速の女子スプリンターとして名を残している。

 しかし、その華やかな容姿に加え、豪華な契約や広告料に彩られた輝かしいキャリアは、違反行為を示す証拠がないにもかかわらず、周囲から投げかけられるドーピング違反の疑いによって黒い影が落とされていた。

 韓国・ソウル(Seoul)で世界記録をたたき出した数か月後の1989年2月、ジョイナーはキャリア絶頂にして現役を引退。そして1998年9月、米カリフォルニア(California)州の自宅で心臓発作を起こすと、38歳の若さで死亡した。(c)AFP