【3月10日 AFP】絶滅の危機にひんしているチンパンジーやゴリラをエボラ出血熱から守るワクチンが開発されたことが、科学者らにより9日、明らかにされた。過去30年間にエボラ熱の犠牲となった野生の類人猿は、数万匹に上っている。

 開発者らによると、このワクチンは経口投与するもので、動物が食べるよう餌に見せかけて放置できる。ダート(矢)よりも簡単で外傷が少ない方法だ。

 英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された論文によると、10匹のチンパンジーを使った研究室での実験では、「filorab1」と称されるこのワクチンが安全であることと、エボラウイルスに対する「強い免疫反応」を生じることが示された。

 研究に参加した英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のピーター・ウォルシュ(Peter Walsh)氏は現在、野生のサルが食べるよう、このワクチンを餌に入れる方法を開発中だ。これが開発された後に最初はゴリラに、後にチンパンジーに使用する計画だ。ある1種の霊長類に効果的なワクチンは、他のすべての種にも同様に効果がありそうだ。

 ウォルシュ氏によれば、エボラ熱で「すでに世界の約3分の1のゴリラが死んで」おり、その数は数万匹に上る。ゴリラやチンパンジーは深い森林に覆われた地域に生息する傾向があり、「ある1か所の局地的範囲で(エボラ熱が)流行すれば、90~95%のゴリラは死ぬ」という。

 チンパンジーに関しては、エボラを死因とする数はさらに不明瞭だが、それでも1~3万匹程度の可能性があるという。

 このワクチンの開発は、エボラウイルスに感染したサルを食べてこの死に至る病にかかる例が多い人間にとっても保護の恩恵をもたらすものだ。

 人間については、世界各地の研究所で少なくとも15種のエボラワクチンを設計中だ。国連(UN)の世界保健機関(WHO)の昨年12月の発表によると、そのうちの1種は「最大100%の効果」を持つ可能性があり、2018年の導入が期待されている。

 エボラ熱は、2014年初めに西アフリカで流行し始め、史上最多の1万1300人が死亡した。

 チンパンジーの試験は、現在ではすべての先進国で禁止されている飼育チンパンジー・バイオメディカル研究プログラムが米国で終了する前に、ルイジアナ大学ラファイエット校ニューイベリア研究センター(University of Louisiana Lafayette's New Iberia Research Center)で行われた。(c)AFP/Mariëtte Le Roux