■相反する2つのスウェーデン観

 トランプ氏を批判する人々は、スウェーデンでは2010年以降テロ攻撃が起きておらず、難民申請者を24万4000人受け入れてからも犯罪率は特に上がっていないと訴えている。

 スウェーデンは、2014、15年の人口1人当たりの難民申請者受け入れ数が欧州で最も多かったにもかかわらず、依然として世界屈指の安全で豊かな国であることに変わりはない。移民を統合する上で困難がないわけではないが、深刻な人種対立や格差、貧困、暴力などが起きている米国とはまったく状況が異なるというのが反トランプ派の主張だ。

 一方で、スウェーデンについて異なる見方をする人もいる。外国人は地元住民より犯罪関与率が2倍高く、失業率も高く、麻薬の闇取引に関与した件数も多い上、警察も立ち入らない区域が複数存在し、イラクやシリアのイスラム過激派に加わって戦うために出国した外国人戦闘員も約300人いると指摘している。

 ステファン・ロベーン(Stefan Lofven)首相(社会民主労働党党首)は、犯罪と移民との相関性というトランプ氏の断定については受け入れなかったものの、移民政策で課題に直面していることは認めた。

 ロベーン首相は20日、報道陣に「われわれには好機もあれば課題もあり、それらをめぐって日々努力しているが、われわれは皆責任を持って、事実を正しく用い、われわれが広めるあらゆる情報を検証していかなければならないとも思う」と述べた。