【2月8日 AFP】われわれの仕事観を根本から変える可能性のあるテクノロジー主導の改革に政治家や政策の専門家が取り組んでいる中、再び注目を集めている夢物語のようなアイデアがある。

 ロボットや人工知能によってホワイトカラー職の多くが時代遅れになるならば、人間は金銭を得るために何をするようになるのだろう?

 各自が持っている資産や働く能力に一切関係なく、全国民に一律の最低所得を保障しようという「ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI、全国民向け最低所得保障)」という構想を見てみよう。これは福祉国家を捨て去ろうと主張する右派リバタリアンと左派の両方から支持されている珍しい構想の一つだ。

 フランスでは4月に第1回投票が行われる大統領選へ向けた左派陣営統一候補を選ぶ予備選で、UBIのような所得保障を含む急進的な政策を掲げた社会党のブノワ・アモン(Benoit Hamon)氏が選出され、驚きをもって受け止められた。財源としては工業ロボットに課す新たな税金などが挙げられている。

 すでにフィンランドやオランダ、カナダ、スコットランド、ブラジルなどでは中央政府や地方自治体レベルでUBIのような所得補償が実際にどのように機能するか評価する作業が始まっている。

 最も進んでいるのはフィンランドだ。今年1月1日から失業中の国民2000人に毎月無条件で560ユーロ(約6万7000円)を2年間支給する制度が試験的に導入された。

 支持派の人々は、ベーシックインカムは少なくとも現在多くの先進国で行われている各種の失業給付金の代わりになる可能性があると主張する。反対にベーシックインカムが導入されれば、新しい職業に就くための再教育を受けたり、高齢者介護など社会で必要とされているものの賃金が低い仕事に就いたりする気がなくなるという主張もある。

 推進派の中には、ベーシックインカムにより万人にセーフティネットが行き届き、人生が仕事によって制限されることはなくなり、社会をよりよくするためのボランティア活動や、創作や芸術活動などに意義を見出す新しい考え方が勢いを得るだろうと言う人さえいる。