【2月1日 AFP】米国の中絶反対論者にとって、人工妊娠中絶の禁止を違憲と判断し、全米50州に女性の中絶の権利を認めた1973年の最高裁「ロー対ウェイド(Roe v. Wade)判決」の見直しは長年の願いだ。

 1日、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が連邦最高裁判所の判事に保守派を指名したことにより、中絶反対者らはこの願いに一歩近づいた。だが、祝杯をあげるまでにはまだ至っていない。

 アントニン・スカリア(Antonin Scalia)判事が昨年2月に死去してから欠員となっていた連邦最高裁判所の判事に、保守派のニール・ゴーサッチ(Neil Gorsuch)判事が指名された。これで、これまで保守派とリベラル派が4人ずつと拮抗していた法廷のバランスに変化が生じる可能性がある。

 しかし、中絶問題をめぐっては保守派の判事アンソニー・ケネディ(Anthony Kennedy)氏がしばしばリベラル派と同調するため、ゴーサッチ氏の指名は、トランプ氏にとっての鉄壁の保障とはならないだろう。判事がもう一人死去または辞任しない限り、反中絶の意見を確実に多数派とすることはできない。

 ただ、反中絶の意見が多数派となれば、各州は中絶の権利を制限することができるようになる。他方で多数派の共和党が中絶禁止の連邦法を通過させることも考えられる。

 世論調査機関ピュー・ リサーチ・センター(Pew Research Center)が最近発表した調査では、米国人10人中7人が「ロー対ウェイド判決」取り消しに反対している。1月27日発表のキニピアック大学(Quinnipiac University)の世論調査でも、米国人の64%が中絶合法の維持を支持しており、反対は31%だった。(c)AFP/Sébastien BLANC