■「おまえたちは偽ニュースだ」

 トランプ氏が18日にツイッター上で攻撃の標的としたのは、米NBCニュース(NBC News)だった。

 NBCは、米自動車大手のフォード・モーター(Ford Motor)やゼネラル・モーターズ(GM)、米防衛大手ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)などが相次いで雇用創出を発表しているが、それは国内の雇用拡大を公約に掲げるトランプ氏の功績ではないと報じた。トランプ氏はこれに対し「完全な偏向報道だ」とツイートした。

 トランプ氏は当選後初めてで就任前唯一となった11日の記者会見でも、同氏にとって不都合な情報をロシアが入手したとする未確認情報を公開したニュースサイト「バズフィード(BuzzFeed)」を「できそこないのごみの山」と呼んで激しく批判し、報復を示唆した。

 この日の会見では、同じ文書について内容の詳細は伏せたまま報じた米CNNテレビにも敵意をむき出しにし、同局の記者の質問に答えず、「おまえたちは偽ニュースだ」と非難した。

 米首都ワシントン(Washington D.C.)にあるナショナル・プレスクラブ(National Press Club)のトーマス・バー(Thomas Burr)前会長は、トランプ氏が自分の気に入らない報道を「虚偽ニュース」呼ばわりすることについて、人々の間に「ジャーナリストを軽視する危険な感情を誘発しかねない」として警鐘を鳴らす。

■予想されるメディア対応の転換

 バラク・オバマ(Barack Obama)大統領は18日に行った任期最後の会見で、自由で闘う姿勢をもったメディアへの支持を表明し、集まった報道陣にこう述べた。「ジャーナリストとは、へつらうものではなく疑うものだ。あなたがたがこの建物(ホワイトハウス)にいたおかげで、ここはより良い職場となった。それゆえ我々(オバマ政権)は公正さを保ち、いっそう仕事に励むことができた」

 だが、トランプ氏の政権移行チームはすでに歴代政権とは異なるメディア対応を行っていくことを示唆している。報道陣を遠ざけるためにホワイトハウス西棟内にある記者会見場の移設を検討したり、報道官による毎日の定例会見をやめたりする可能性にまで触れている。

 米メリーランド大学(University of Maryland)ジャーナリズム学部のルーシー・ダルグリッシュ(Lucy Dalglish)学部長は、トランプ氏がCNNなどをこき下ろした11日の記者会見に驚きはしなかったという。同氏は「あれが彼のスタイルであり、私たちはあのような会見をこれからもっと見ることになるだろう」と警告。そうした「劇場型」の会見によって、メディアと国民の目がもっと重要な政策論議からそらされてしまう危険性を指摘する。