■絵文字考案の賞与なくてもうれしい

 絵文字は今や、インターネット上のあらゆる種類のコミュニケーションで見受けられる。男子テニスのスター選手、ロジャー・フェデラー(Roger Federer)が膝の手術後の復帰を発表した際にも絵文字が使われた。またオーストラリアのジュリー・ビショップ(Julie Bishop)外相が、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領を表現するのに真っ赤に怒った顔文字を送ったこともあった。

 また米リアリティー番組で人気のタレントで、インスタグラム(Instagram)上だけで8890万人のフォロワーを誇るキム・カーダシアン(Kim Kardashian)さんに至っては、「キモジ(Kimoji)」なるオリジナル絵文字を発表しているほどだ。

 あるデジタルマーケティング会社が発表した2015年の絵文字に関する報告書によると、「オンライン人口」で絵文字を使用している割合は推定92%に上る。またオックスフォード英語辞典(OED)が同年の「今年の言葉」に選んだのも、絵文字の一つだった。

 最近では、英ロンドン(London)の翻訳会社が、同社初となる「絵文字の翻訳者」の募集を発表。「世界で最も急速に拡大している言語がもたらす課題」に取り組むためと説明した。

 カナダ・トロント大学(University of Toronto)で人類学を専門とし、絵文字に関する著作もあるマーセル・ダネージ(Marcel Danesi)教授は、「著述行為における新局面が開かれ、ますます多くの音標文字やビジュアルシンボルが盛り込まれるようになっている」「絵文字はある意味では、コミュニケーションをより流動的かつ効果的にしたともいえる」と評価している。

 栗田氏は50年後、100年後の絵文字について、「なくなることはないと思う。ハートはあくまでもハートに…もっとイラストっぽいものはどうなっていくのだろう」と想像することがあるという。

 現在はインターネットサービス企業「ドワンゴ(Dwango)」の執行役員を務める栗田氏だが、これまで絵文字作品に対する賞与金などは一切受け取ったことがないという。「私自身としては、今回のMoMA収蔵で歴史に残った栄誉だけで、十分過ぎる報酬だと思っている」と控えめに語った。(c)AFP/Anne BEADE Miwa SUZUKI