■新たなビジュアル言語の起源

 当時既に、電子メールのメッセージがいかに誤解されやすいかを痛感していた栗田氏は、メッセージに反映されている気分や感情をはっきりと表現するための視覚的な「おまけ」を作りたいと考えた。

 そして、前段にどんな否定的な文言が含まれていたとしても、「ハートの絵文字が付いているとネガティブに感じない」ということに気付いたと、栗田氏は説明する。

 MoMAでデザインコレクションを専門とするポール・ギャロウェー(Paul Galloway)氏は、「これら12ピクセル四方の控えめなデザインの傑作こそが、新たなビジュアル言語が爆発的に成長する種をまいた」と、同美術館の公式ウェブサイトに記している。

 実は初期絵文字のアイデアの中には、「うんち」マークも含まれていた。「幼稚なものではあるのですが、皆がクスッと笑うようなものであったら面白いと思った」と栗田氏。だが、「会社のイメージとしてやめてほしいということで、(当時)却下になった」と笑いながら説明した。

 今日、スマイルうんちマークは世界で最も人気の絵文字の一つとなっている。ただし、絵文字使用数の集計ウェブサイトによると、最も多く使われているのはうれし涙を流している顔文字だという。

 日本国内では21世紀初頭に既に人気だった絵文字が世界的に大人気となるまでには、さらに10年を要した。

 成功の理由の一つには、スマホ人気の急騰がある。これが携帯電話上でのメッセージ交換の急増につながったからだ。