――ジュネーブ・シールとは?

 スイスには約700の時計ブランドがあります。この業界で存在感を出したければ、何か違うことを発信する必要があります。私たちのような歴史の浅いブランドが、ハイエンド市場で信頼を得るにはどうすればいいか? 私たちは自らを証明しなければなりません。

 デュブイ氏がこのビジネスを始めたとき、彼は時計づくりに対する真剣な思いを表現する方法を探していました。その思いが、(品質を認定する)ジュネーブ・シールの取得につながりました。ジュネーブ・シールの時計を作るには、普通のものより生産時間が40%長くかかります。ですが、この業界を知っているコレクターたちにとっては大きな付加価値です。

「メード・イン・スイス」とうたうには、価格の50%以上の部品がスイス国内で製造されていればいいのです。多くのブランドは製造工程のほとんどをスイス国外で行い、国内で10分だけ最後の仕上げを行って、「メード・イン・スイス」とうたっています。だから私たちはジュネーブ製にこだわります。ジュネーブ・シールは、顧客にとって保証となるものです。

 私はCEOに就任したとき、製造工程をオープンにすることを約束しました。知ってのおとり、情報を公開しない銀行をはじめスイスは秘密主義の国です。時計メーカーも同じで、アポなしに突然訪れることはできません。写真も撮影できません。

 しかし「ロジェ・デュブイ」では、自由に撮影できます。私たちの会社には毎日来客があります。何も隠すものがないからです。私たちのような時計を作っているブランドはほとんどありません。だから私たちには秘密がないのです。より多くの人がここを訪れて、私たちがすべてをここで製造している現場を見るほど、私たちの製品に対する信頼が高まります。

「ロジェ・デュブイ」の(左から)「エクスカリバー クアトゥオールコバルト マイクロベルト®」「エクスカリバー36 オートマチック」「エクスカリバー スパイダー オートマチック スケルトン」(2016年11月25日撮影)。(c)Watches Press/Yoko Akiyoshi

――大きくて古いブランドは「クラシック」に回帰しても認められるが、「ロジェ・デュブイ」は若いブランドだから無理だと、以前語っていましたね。

 私たちは自動車業界で起きていることに、インスピレーションを感じています。私たちは昨日、「ロールスロイス(Rolls Royce)」を訪れました。見事なデザインでした。彼らはクラシックなデザインから、人気デザインを生み出しています。数か月前に聞いた話によると、ロールスロイス所有者の平均年齢は現在、40歳だそうです。

「ロジェ・デュブイ」も同じです。英国、日本、米国などで売り上げの7割を占めているのは「エクスカリバー」モデルです。私たちが、エクスカリバーをほかのモデルと同じようにマーケティングしているのにも関わらずです。12年前に発表したモデルですが、市場は大きく変わりました。ですから、「クラシック」になるには200年も必要ないのです。

 エクスカリバーは、ラバーやチタンなどの新しい素材で進化してきました。時計は小さな商品ですが、サイズ、素材、色、ベルトで多くの工夫ができます。例えば、「ベルベット」コレクションは、オートクチュールのベルトを使うことにより、時計の概念を変えました。現代の流行や技術を応用しても、クラシックさを維持することはできるのです。

「ロジェ・デュブイ」日本初の旗艦店、銀座ブティックの店(2016年11月25日撮影)。(c)Watches Press/Yoko Akiyoshi

■関連情報
・ロジェ・デュブイ 公式HP:www.rogerdubuis.com
ジャン・マルク・ポントルエCEOが語る、「ロジェ・デュブイ」の世界観(後編)
(c)Watches Press