――スイスの時計産業が困難な時代を迎えているにもかかわらず、「ロジェ・デュブイ」は世界的に展開しています。どのように店舗を拡大しているのでしょうか?

 東京の新店舗は、最近ニューヨーク(New York)や上海(Shanghai)などでオープンした店と同じく、成長の節目となるものです。これらの都市には将来的に大きな可能性が期待できます。

 私たちはまだ成長途上にあると言えるでしょう。世界のどこにでも店があるというわけではありませんし、どこにでも店を出したいと思っているわけでもありません。数年前までは英国にもありませんでしたが、今は老舗高級百貨店「ハロッズ(Harrods)」の中にあります。そう行った場所にこそ店を構えるべきだからです。

 私たちは差別化を図ることによって、ブランドの付加価値を高めています。ほかとは違うからこそ存在意義があります。店ではほかのブランドとは違う製品、サービスを提供し、顧客満足度を完璧にしようと努めています。

 また提携先の「ハロッズ」の顧客層は、私たちのブランドに適しており、わが社の成長の助けになるでしょう。

「ロジェ・デュブイ」日本初の旗艦店、銀座ブティックの店(2016年11月24日撮影)。(c)MODE PRESS/Mana Furuichi

――限定1本、28本、88本、188本、288本のモデルを効果的に発売していますが、在庫管理はどのようにやっているのですか?

 実は、していないんです。多すぎないようにだけはしています。コンセプトは入手困難だというフラストレーションを顧客に与えること・・・冗談ですよ、でも、そういった気持ちを抱かせることは重要です。

 例えば、「クアトゥオール」モデルは、日本市場には今年は1本しか用意していません。多く生産することもできましたが、意図的に数を限って価値を出しました。500本でも1万5000本でさえも「限定」モデルと宣伝する業界で私たちはビジネスをしています。どこまで「限定」と言い続けるのか? 私たちのような高額な製品を販売する場合、顧客をだますことはできません。

 正しい扱いを受けた顧客は、私たちが最高のブランドだということを決して忘れません。私たちの新規の顧客で最も多いのは、既存の顧客から紹介された人たちです。顧客をだますようなことをすれば、決して許してもらえないでしょう。顧客に対し敬意をもって接すれば、彼らは私たちのブランドの生涯の広告塔になってくれるのです。

 だから私たちは、限定モデルを発表するときは約束した本数以上を生産することはありません。8本では十分でないだろうことは分かっていますが、それが製品に価値を与えるのです。

 私たちのような規模の会社で大事なのは、1年に20もの新作を開発しないことです。私たちは今後20年に発表する新モデルの理想的な数を見つけました。わが社の規模や顧客ら見た信ぴょう性などをもとに、はじき出した数字です。それでこそ私たちに見合った、インパクトのある戦略を作ることができるのです。

「ロジェ・デュブイ」の「エクスカリバー 42 オートマチックスケルトン 18KRG ダイヤベゼル(RDDBEX0423)(2016年11月25日撮影)。(c)Watches Press/Yoko Akiyoshi