■17世紀にさかのぼる伝統

 アーバンワイナリーは10年以上前に米サンフランシスコ(San Francisco)で流行し始め、今ではニューヨーク(New York)、ロンドン(London)、香港(Hong Kong)でも姿を見せている。

 一方、パリの醸造所の伝統は数世紀前にさかのぼる。その中心地はセーヌ(Seine)川の南岸、サンベルナール河岸(Quai Saint-Bernard)に1665年に開設されたワインホールだった。近くにあるベルシー(Bercy)地区の倉庫街では、1970年までワインがブレンドされていた。

 19世紀にフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)と呼ばれる害虫の被害によってフランスのワイン産業が大打撃を受けるまで、パリは約4万4000ヘクタールのブドウ栽培面積を誇るワインの一大産地だった。

 セーヌ川の小さな中州、シテ島(Ile de la Cite)にも 醸造所があるほどだったとワイナリー・パリジェンヌの共同創設者アドリアン・ペリシエ(Adrien Pelissie)氏は言う。同氏はアーバンワイナリーの流行には、伝統の復興だけでなく、最近関心が高まっている地産地消という側面もあると語る。

 ペリシエ氏の目標は向こう4、5年以内に、純パリ産のワインを製造することだ。ワイナリー・パリジェンヌの現在の生産量は年間約5万本。さまざまな地方で生産されたブドウ品種をブレンドして「味わい豊かで果実味が濃く、バランスが良い革新的な特徴」のワインになっているという。

 一方ビニュロン・パリジャンは2015年に1万9000本を生産し、2016年の目標は前年の2倍に迫る3万5000本だった。生産しているのはブレンドをしない単品種ワインでシラー、サンソー、グルナッシュ、グルナッシュ・ブランといった品種を使っている。そのすべては有機栽培されたもので、新鮮さを売りにしている。「私たちはみんながワインを飲む場所でワインを造りたい」とボセールさんは言う。

 ビニュロン・パリジャンのワインは、ワインショップからこだわりのあるビストロ、そしてレストラン格付け本「ミシュランガイド(Michelin Guide)」の星を獲得しているレストランまで、さまざまなところに置かれている。

 そんなレストランの一つ「テロワール・パリジャン(Terroir Parisien)」のオーナー、ジョフロワ・バリエ(Geoffroy Berrier)さんは「最初は少し疑っていた」と言う。だが「客に勧めるとまず(パリ産であることに)驚き、さらにその質の高さに驚いている」 (c)AFP/Simon VALMARY