■宗教と絡み合うナルコ・カルチャー

 豪華な墓は、過去10年の間に広まったナルコ・カルチャーの象徴の一つとして、音楽やテレビ番組、映画やファッションにも影響を与えてきた地下世界の宗教的側面をあらわにした。「麻薬密売はコミュニティーの中で伝統的な文化にまで浸透しており、今やどこまでがそれで、どこからが違うのか見分けがつかないほどだ」と言う。2016年11月には子どもへの影響を懸念して、テレビのゴールデンタイムに「麻薬絡みの連続ドラマ」を放映させないようにしようと国会議員が動いたこともあった。

 ナルコ・カルチャーは宗教とも複雑に絡み合っている。犯罪者だけでなくメキシコ人の多くが「サンタ・ムエルテ(Santa Muerte)」と呼ばれる骸骨の聖人を信仰している。この聖人はローマ・カトリック教会からは異端として否定されたが、今も米国などで信仰者を獲得している。

 他にも民間信仰の聖人にヘスス・マルベルデ(Jesus Malverde)がある。言い伝えによるとこの人物は1909年にクリアカンで絞首刑になるまで、金持ちから盗んだものを貧乏人に与えるロビン・フッド(Robin Hood)風の無法者だった。

 米バージニア・コモンウェルス大学(Virginia Commonwealth University)の宗教学教授、アンドリュー・チェスナット(Andrew Chesnut)氏はこう説明する。「ナルコ・カルチャーには強い宗教的要素がある。神秘的な力による守護を必要とするのは誰かと言えば、それはいつ何時でも敵対する組織や警察の銃弾に倒れる可能性がある密売人たちだからだ」(c)AFP/Laurent THOMET