【12月9日 AFP】ホンジュラスでバスの運転手をしているアルマンドさん(35)は、自分の命の値段が90ドル(約1万300円)だと知っている。その金額が、同国で最も恐れられている反社会的組織の1つ「マラ・サルバトルチャ(Mara SalvatruchaMS-13)」に支払う「みかじめ料」の1か月分だからだ。

「毎週の支払いが滞れば、彼らに殺される」──検問所での兵士らによる乗客の検査を横目に、苗字を明かさないことを条件にAFPの取材に応じたアルマンドさんはそう語った。そして、グアテマラとエルサルバドル、ホンジュラスによる合同作戦の枠組みで活動する兵士らを指さしながら「今は彼らのサポートがある」と続けた。

 先月組織された3か国合同の部隊は、国境地帯で活動を行っている。この地域の反社会的勢力撃退が目的だ。これらの反社会的勢力は、中米3か国を紛争地帯に次ぐ、地球で最も危険な場所に変えてしまった。

 ホンジュラスでは、エルサルバドルとグアテマラそれぞれの国境沿いに部隊が配備されている。

 反社会的勢力は、国境を越えて麻薬や武器の密輸や人身売買などを行っており、国家警察の目が行き届かないため、当局者たちは、こうした協力が不可欠と声をそろえる。

 3か国の合同部隊は、兵士と警察官で構成されており、それぞれが自国を管轄する。常に情報交換を行いながら任務にあたってはいるが、合同でのパトロールはしていない。

 ホンジュラスでは、6大隊から派遣された兵士600人が警察とともに国境の監視活動に当たっている。各大隊からは、それぞれ平均3か所に兵力が配備されている。エルサルバドルでは、警察の後方支援を受けた兵士ら約1000人が、国境検問所や道路などに配備された。グアテマラでは、警官200人、兵士100人、税務当局者5人が任務についている。既に密入国や人身売買、麻薬の密売、反社会的活動などに関わった容疑者らの身柄が拘束されているという。

 一方で、米国はこれら3か国の治安が向上し、国民の好機会が増えることを期待して、総額7億5000万ドル(約860億円)の支援を行っている。米国への移住を思いとどまらせたい思惑もある。

 エルサルバドルの犯罪学者ホセ・リバス(Jose Rivas)氏は、この合同作戦は、米国に対するエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス3か国からのジェスチャーだと述べる。「反社会的勢力や組織犯罪は、北部三角地帯(Northern Triangle)から数多くの人々が米国を目指す主な理由となっている。(合同作戦は)これに政府レベルで対応しているとのメッセージだ」

 北部三角地帯の3か国を合わせた殺人事件の数は昨年だけで1万7422件に上り、同地帯の治安の悪さを改めて証明した。犯罪の多くはギャンググループや麻薬カルテルによるもので、こうした犯罪組織に属する構成員の数は7万人に上るとみられている。(c)AFP/Noe LEIVA