【6月2日 AFP】朝の5時に電話で起こされるのは、間違い電話か緊急事態のどちらかだ。この金曜日は、間違い電話ではないほうだった。

 電話をかけてきたのは、私の情報提供者の一人。エルサルバドルの悪名高いギャングのメンバー数百人が、国内東部の刑務所2か所から、首都サンサルバドル(San Salvador)の西方イサルコ(Izalco)にある最高レベルの警備の刑務所に移送されるという情報だった。

 この数週間、エルサルバドルでは当局が囚人たちの大規模な移送を行っていた。収監されているギャングのリーダーたちと、塀の外にいる彼らの部下たちとの連絡ルートを断つ戦略の一環だ。リーダーであることが判明した囚人たちは、警備がより厳戒な刑務所へ送られる。人口600万人のこの国で、今年に入ってから3か月の間に組織犯罪絡みの抗争によって1124人が死亡した。犠牲者は兵士や警官、巻き込まれた民間人、そして対立するギャング同士のメンバーたち。急増したこうした事件を絶つことが、大規模な囚人移送の狙いだった。

 私はベッドから飛び起きて、イサルコの刑務所へ向かった。そこには、シウダード・バリオス(Ciudad Barrios)とチャラテナンゴ(Chalatenango)の刑務所から400人の囚人が移送されてくる予定だった。朝8時頃に到着すると、すでに最初の一団の移送が終わり、門は閉じていた。悔しい思いに駆られた私は、情報提供者に電話した。すると、ギャンググループ「マラ・サルバトルチャ(Mara SalvatruchaMS13)」のメンバー約300人がまだシウダード・バリオスを出ていないので、待っていろと言われた。

 待っている間にもメッセージが送られてきた。「移送は遅れている。刑務所内で武器と違法薬物が見つかったため、バスはどこへも動く気配がない」。どうやら長期戦になりそうだった。私はパトロール中の兵士や、遠距離の移送に苦情を述べている囚人たちの家族、記者仲間たちと雑談を始めた。これも仕事のうちだ。