【11月27日 AFP】クロアチアで26日、コリンダ・グラバルキタロビッチ(Kolinda Grabar-Kitarovic)大統領がカナダを訪問した際の写真で第2次世界大戦(World War II)時の親ナチス(Nazis)政権下で使用されていたクロアチア国旗が写っていたことから、この写真をめぐりネット上で議論が炎上している。

 この写真はカナダ在住のクロアチア人男性がフェイスブック(Facebook)に投稿したもので、グラバルキタロビッチ大統領と投稿者の男性らがクロアチア国旗と共に写っているが、この国旗は戦時中のファシズム政党ウスタシャ(Ustasha)政権が使用していたものだった。ウスタシャ政権はセルビア人、ユダヤ人、ロマ人、反ファシズム活動家ら多数を迫害・殺害した親ナチスの政権だ。

 現在のクロアチア国旗は中央に描かれた盾の赤と白のチェック柄で左上角の升の色は赤だが、クロアチア史上でこの左上角の升が白い、柄違いの旗が使われていた時代があった。特にウスタシャが用いていたことで知られているが、第2次世界大戦後、クロアチアが旧ユーゴスラビア連邦に併合された時に現在の旗に替わった。

 クロアチアが独立を宣言する以前の1990年に短期間だけ両方の国旗が使われていたが、同年12月の国旗法制定により左上角の升が赤い柄のものが正式なクロアチア国旗となった。

 グラバルキタロビッチ大統領の写真をめぐる騒動について、大統領府はテレビ局N1に「問題と考えられる点は一切ない」と反論し、1990年にクロアチア議会前に掲揚されてたこともあると指摘。戦時中のウスタシャ政権に対する大統領の見解は明確であり、何度も反対の意を示してきたと強調した。実際、グラバルキタロビッチ大統領は過去に何度かウスタシャを非難している。

 これに対するネットでの反応は活発ながら、賛否は分かれている。

 グラバルキタロビッチ大統領は2015年に行われた大統領選で保守系のクロアチア民主同盟(HDZ)から立候補し、当選しクロアチア初の女性大統領に就任した。だがクロアチア民主同盟が主導した前政権は、極右の台頭を見て見ぬふりするなど親ナチス政権時代に回帰的だと非難されていた。

 クロアチアでは大統領の権限が制限されている。(c)AFP