■中には無表情にこだわらないデザイナーも

 米ニューヨーク(New York)パーソンズ美術大学(Parsons School of Design)のパリ分校でファッション学部部長を務める人類学者のレイラ・ネリ(Leyla Neri)氏は、フェミニズムの台頭により「女性が自分たちの仕事をプロとして認めてもらう必要性」が生まれる中、「アルマーニ(Armani)のスーツを着て、強さを強調し笑顔も見せずにポーズを決める女性が目立つようになった」と話す。ただ、最初のムーディーでしかめっ面のモデルについては、60年代のブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)やジェーン・バーキン(Jane Birkin)だったとしている。

 そして、現代のデザイナーは「よりミニマリストのビジョン」を持っており、「作品を見せる際には最大限自然な表情と体形を求めている」としながら、モデルたちについては「美の理想形」として見られていないことが、あまり理解されていないと指摘した。

 とはいえ数年に一度くらいは、フランス人デザイナーのジャンポール・ゴルチエ(Jean-Paul Gaultier)といった独創性の強いデザイナーらが、笑顔のモデルをランウェイに送り出すこともある。

 英デザイナーのポール・スミス(Paul Smith)が今年パリで開催したメンズウエアのショーでも、後半に笑顔を見せたモデルも数人いた。ショーの後にAFPの取材に応じたスミス氏は、「笑うように指示したわけではないが、笑うことが悪いとも思っていない。服がハッピーな気分にさせるのなら、笑えばいい」と語った。

 ただ同じショーに登場したビヨさんは、どうしても笑えなかったという。ビヨさんいわく、あまり陽気に見え過ぎると滑稽に映るのではと気にするモデルが多いのだという。

 オグンコヤさんも同意見だ。「ただ歩いて姿を消す方が楽。笑顔を見せようと思えば確実にハードルが高くなる」と認めている。

 笑ってほしいと注文を受ければ笑うのだろうか? オグンコヤさんは「断る理由はないね」と答え、「この仕事をしていると、とんでもないことばかり要求されるから」と続けた。(c)AFP/Fiachra GIBBONS