【8月10日 AFP】ドーピング問題の渦中にあるロシア選手がリオデジャネイロ五輪出場を認められたことに対して、米国のマイケル・フェルプス(Michael Phelps)やリリー・キング(Lilly King)といった有力選手が公然と怒りの声を上げている。国際オリンピック委員会(IOC)は9日、薬物違反者の永久追放を検討すると約束したものの、実現は難しいことをうかがわせた。

 問題はリオ五輪の競泳で勃発し、さながら米露の冷戦(Cold War)の様相を呈している。まずはキングが、薬物違反による出場禁止歴のあるロシアのユリア・エフィモワ(Yuliya Efimova)を激しく批判し、エフィモワには会場からもブーイングが浴びせられた。

 そしてフェルプスもキングに加勢し、違反者のリオ五輪出場に怒りをみせていた。フェルプスは、「多分これから、声を上げる人間はどんどん増えていくだろう。僕としては何か手を打つべきだと思う」とコメントしていた。

「陽性になりながら、それも何度も陽性になりながら競技に戻れる選手がいるのは悲しいことだ。これは水泳に限った話ではなく、スポーツ全般の話。スポーツの意義をぶち壊しにすることだし、腹が立っている」

 違反者の処遇について、IOCのトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長は永久追放に意欲的だというが、IOCの広報はこの日、法律の面で難しさがあると話して実現が難しいことをうかがわせた。

 IOC広報のマーク・アダムズ(Mark Adams)氏は、「会長は、深刻な薬物違反については、永久追放にしたいという強い思いを持っています」と話したうえで、次のように続けた。

「考えられる選択肢はいくつもあり、それももちろんその中に含まれると想像しますが、そこには非常に難しい法的枠組みがあります。会長は非常に意欲的ですし、ファンも非常に意欲的にみえますから、あとは法的に有効な方法を見つけられるかでしょう」

 しかし、不満の声を上げる選手が増え続ける状況を収めるには、こうした言葉だけでは足りないのかもしれない。陸上短距離の元世界王者、マイケル・ジョンソン(Michael Johnson)氏は、フェルプスと同様、違反歴のある選手は五輪から締め出すべきだと話している。

 1996年のアトランタ五輪で男子200メートルと400メートルの2冠を達成したジョンソン氏は、「出場禁止歴か、違反歴が1回でもある選手は五輪に出場させるべきじゃないという彼らの言葉を本当にうれしく思う」と話している。

 ちなみにキングは、エフィモワに限らず、陸上短距離のジャスティン・ガトリン(Justin Gatlin)ら、薬物違反を犯した米国選手の出場も禁止にすべきだと話し、「違反の見つかった選手がチームにいてもいいと思うか?いいえ、そうは思わない」とコメントしていた。(c)AFP/Talek HARRIS