【7月20日 AFP】イドリサ(Idrissa)さん(25)とエロワ(Eloi)さん(25)は、ヤギの肉と雑穀のビールで栄養をつけて、一年中、厳しいトレーニングをしている。2人はブルキナファソに古くからある伝統的なレスリング競技の選手だ。

 2人とも体重80キロを超えるがっしりした体格だが、体を鍛えるだけでは試合に勝てないと思っている。魔法や神秘的な力、そして祖先の力も勝敗を左右すると考えているのだ。

 同国のレスリング連盟会長で元選手でもあるピエール・バディエル(Pierre Badiel)氏(52)は「サッカーや空手のように輸入されたのではない唯一のスポーツだ」と言う。「私が子どもの頃、レスラーは尊敬される存在だった。彼らは英雄だった」「2人の人物の間の紛争を解決する手段としてレスリングを使ってさえいた。この国の伝統の一部なんだ」

 ブルキナファソ北西部のブクル・デュ・ムーン(Boucle du Mouhoun)地方では、レスリング選手は一家の、そして村の誇りだ。

「収穫期の最後に新しい雑穀の収穫を祝い、それぞれの村で試合が行われる」とバディエル氏は言う。「勝者は名誉を得る。とても大きな名誉だ」

 毎年開催される全国大会は一大イベントだ。4月下旬に北西部の町トゥーガン(Tougan)の競技場には約3000人のファンが詰めかける。遠方から来た人たちもいる。

 各試合の開始前に、当日の朝作られた闘技場の熱く焼けた砂に子どもたちがバケツで水をまく。地域の歴史を口承する「グリオ」と呼ばれる十数人の吟遊詩人が、過去の最強のレスラーたちの物語を語る。

 たくましい戦士たちが短パン姿で現れる。腰回りには、伝統的な布で作ったカラフルなひもがぶら下がるベルトを締めている。

 ヤギの革で作られたもう1本のベルトからは鈴がぶら下がっている。観客が声援を上げる中で対戦相手と組み合った時に、この鈴を鳴らして対戦相手をひるませるのだ。