【7月6日 AFP】南米初の五輪開幕まで残り1か月となった──。ブラジル・リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)では、犯罪の発生件数が増加しており、財政難にも直面しているが、同市市長や五輪組織委員会は、大会開催に向けて楽観的な見方を示している。

 それぞれの競技場は、最後の仕上げを除いて準備万端となっている。8月5日から21日までの五輪開催期間には、少なくとも50万人の旅行者がこれらの施設を訪れる見込みだ。

 リオデジャネイロ五輪組織委員会のカルロス・アルトゥール・ヌズマン(Carlos Arthur Nuzman)氏は5日、エドゥアルド・パエス(Eduardo Paes)市長の共同記者会見で「リオデジャネイロ市は偉大な変身を遂げた」と述べ、これまでの努力をたたえた。

 大会には、陸上競技のウサイン・ボルト(Usain Bolt)選手や水泳のマイケル・フェルプス(Michael Phelps)選手ら、約1万人が参加する。だが、大会に向けたスポーツ界の意気込みや各五輪関連施設での目を見張るような進展にもかかわらず、山積みとなった問題が開幕を前に暗い影を落としている。

 ブラジルはイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が活発に活動する地域ではない。だが、過去1か月の間だけでも、イラクのバグダッド(Baghdad)やトルコのイスタンブール(Istanbul)、バングラデシュ、米フロリダ(Florida)州で、同組織が関与していると考えられる無差別攻撃や自爆攻撃が相次いで起きている。これを考慮すると、期間中のテロ行為は大きな懸念事項となる。

 当局は、警察官8万5000人を配置し、陸軍の援護も投入する。これは2012年のロンドン五輪での警備要員の約2倍の規模だ。

 5日に発表された政府統計によると、今年に入ってから増加を続けていた殺人事件件数が初めて減少に転じた。5月までのリオデジャネイロ州全体の殺人発生件数は計2083件となっている。ただ、路上強盗は急増しており、5月には9968件を記録した。これは、昨年の同月比のほぼ3倍で、毎時間14件の強盗事件が発生している計算となる。

 経済不況にあえぐブラジルにおいて、リオ州は財政難に陥っており、過去数か月にわたって警察官や救急隊員、教師や年金生活者への支払いが滞っている状況だ。4日には、国際空港到着ホールで警察官らが抗議デモを行い、「地獄へようこそ」と書いた横断幕を掲げて、同市内での安全は保障されないと訴えた。

 これらの悪評にパエス市長と五輪委員会は反論。同市長は、これまでの「改善」は1992年のバルセロナ五輪のそれに匹敵するものと強調。「リオ2016五輪もまた都市を変身させることができる」 と述べた。

 そして、有名ゴルファーらを含む、競技選手ら数人が、蚊の媒介するジカウイルスを恐れて五輪欠場を決定している問題もある。これについて当局は、重大な健康上のリスクはないと主張している。(c)AFP/Sebastian Smith and Yann Berna