■眠れる巨人

 X線を検出できたという事実は、いわゆる降着円板による増幅効果のおかげだという。降着円板は、ブラックホールに落下している物質がドーナツ状の渦になったものだ。

 これまで、崩壊しつつある恒星の断末魔の中で発生するX線は、ブラックホールから噴出された巨大な粒子ビームに由来するものだと、科学者の間では考えられていた。

 しかし、今回の観測結果は、この説とは違うものだった。カーラ氏は「実際に、ブラックホールの中心に非常に近いところで、この反射が作用していることが確認できた」と説明している。

 現在は不活発な状態となっているブラックホールは、過去に銀河の進化で重要な役割を担ったものである。そのため、休眠中のブラックホールが活性化した様子を観測することで、宇宙の形成に関する手がかりが得られる可能性がある。論文共同執筆者でメリーランド大のクリス・レイノルズ(Chris Reynolds)教授はそのように話す。

 レイノルズ教授は、声明で「活動的なブラックホールばかり観測していると、得られるサンプルは偏りが強くなる可能性がある」と指摘している。(c)AFP/Marlowe HOOD