【6月24日 AFP】両脚に重傷を負い、病院のベッドに横たわるセネガルの漁師アリ・フォールさん(25)は、地元の川で網を引いていたときにカバに殺されかけた瞬間を振り返る。「友人の漁師と一緒に仕掛けておいた網を引き揚げに行ったとき、カバに船をひっくり返された。友人は逃げたが、私は左脚、それから右脚をかまれた」とショックを受けた様子で語った。

 セネガルの首都ダカール(Dakar)の東方500キロに位置するグルンボ(Gouloumbou)にあるガンビア(Gambia)川の支流流域やフォールさんの村では、しばしば漁師たちが血を流してきた。村の役人によると、この10年間で漁師25人がカバにかみ殺され、大勢が負傷したという。

 グルンボ村の村長は、かつて村人とカバは比較的穏やかに共存していたと語り「昔は川でカバたちと一緒に遊んだものだ。彼らは人に危害を加えなかった」という。そんな状況が一変したと語るのは漁師のアブドゥラエ・サールさんだ。「奴らは昼夜を問わずに襲ってくる邪悪なモンスターだ。奴らのせいで漁にならない」と語る。

 サールさんと友人のムサ・ボカル・ゲイェさんは長きにわたって漁をなりわいとしてきたチュバロ(Thiouballo)族だが、この日も伝統的な木のボートで川に出ることはかなわなかった。「もう3週間も漁に出ていない。おかげで市場にはもう魚がない」と述べた。

 カバは沼辺や川辺に生息する草食動物で、大きい個体の体重は1500キロにもなる。日光から肌を守るために長時間を水中で過ごす。野生生物の専門家によると、カバは恐ろしいほど力がある上に怒りやすく、アフリカでは毎年、他のどの動物よりも多くの人を殺している。